第3話 模擬戦
模擬戦でのルールは大きく分けて2つ。
相手が降参するか、相手が気絶した場合、その時点で模擬戦を終了とする。
もう1つは、模擬戦で使用する武器は、基本的には殺傷能力のないものを使用するが、両者の同意があった場合はその限りではない。
「武器はどうする?」
ソフィと2人。戦うために別室に入る直前、僕は口を開いた。
「武器って?」
「殺傷能力の有無……って言ったほうがいいのか?」
殺傷能力……。有りなら真剣や、ひょっとしたら聖具も有りなのかもしれない。
ただ、熟練の達人ならば、素手で人を殺せるらしいし、木刀で人の頭を斬りとばす事例もあったそうだ。
「うーん。無しでいいんじゃない?」
「そうだな」
無し……となると、木刀?
「まぁ、大丈夫だろう」
熟練の達人ならまだしも、僕がやろうとも頭は飛ばないだろう。
と、そんな事を考えながらもソフィの方を見ると、はたしてそこにいたのはムチを手にして、ブンブン振り回している所だった。
「うーん。大丈夫かなぁ、これ」
「決まったなら早くやろうぜ」
相変わらず、脳裏によぎるのは最高戦力の戦いっぷり。
まぁ……あんな動きが出来るなんて、思ってないけれど、正直憧れた。
それだけの力があれば、あの時……
「おー!やろぉー!」
僕が、淡い憧れを抱いている時、突然出された大声に、現実に引き戻された。
「あ、ああ」
そして、僕とソフィは、剣(闘志)を交える。
半径800m程度の、ほとんど正方形のフィールドで、僕は木刀を構えた。
目の前には鞭を構え、既に臨戦態勢になっているソフィがいる。
「鞭……。木刀とは相性が悪いな」
さて……。どうするかな。と、その時、
「来ないなら、私からいくよ!」
と、ソフィの軽快な声が耳に届いた。
見れば、愚直にも一直線に突っ込んでくる。
「避けて壊す……」
僕は、とっさに考えたプランを口にしながら、ソフィの一撃を回避する。が、
「ーーーッ!!」
回避したはずの一撃は、軌道を変えて僕を襲ったのだ。
間一髪、反応し、防御したが……やっぱり相性が悪い。
「厄介だな……」
僕が、何故こんなにも手に余ってしまっているような現状になってしまっているのかというと、ひとえにリーチの差だ。
あいつのもっている鞭は、見た感じ4〜5mくらいの長さ。
それに対して、僕の刀はせいぜい50〜60cmだ。
その差をどう埋めるか。
「って、後手に回っても始まらないか」
あの鞭の動きは、幸いにも視認できる。
ならば、近づき、手数で押し切るーー!。
「ふふーん。突っ込んできたねー?」
などと、ソフィはほざいているが関係ない。
あの鞭は、目で追えるし、なにより、
「鞭は、ある程度距離がいる」
眼前に迫る鞭は、躱し、さらに軌道を変えることも考えて、常に2mは距離が保てるようにする。
「えっ……!ちょっ……!」
ソフィは、というと、段々と顔が引きつっている。
ソフィは木刀に警戒してるはず。ならば、
「え?」
などと腑抜けた声を出しているソフィをよそに、僕は、持っていた木刀を放り投げ、ソフィに肉薄する。
そして……
「これで、終わり……だぁぁぁああ!!」
僕は渾身の右ストレートをソフィの頬にぶち込んだ。
龍壊師 @ekkusu
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