第2話 常識はずれ

「ふぅー!ついたー!」

ソフィは模擬戦用の部屋に着くなり大声で叫んでいた。その声に、付近の龍壊師が振り向いていた。

ってか、

「うるせぇよ……」

と、気付けば毒づいていた。

まぁ、それはいいとして、なんだろう。

人が、多い気がする。

「おいあれ……。2番のモニター」

模擬戦は、戦いをするだけではなく、他人の戦いを観戦する事もできる。

その際には部屋の中央にある1番から9番のモニターを見る事で観戦できる。

画面の両端には、それぞれ戦っている人の階級と名前が表示される。

「上位龍官、リオ=アニキトス対上位龍官、シャナ=フォーヴォ……」

と、前の人が隣の人に指差しをしているのが目に入り、その方向に目を向けてみると、はたして、そこにあったのは、龍壊師の最高戦力2人が戦っている様子だった。

「すっご……」

隣のソフィも、絶句している。多分。

というのも、それほどまでに上位龍官の戦いは常識外れだった。

モニターから消えたと錯覚するほどの速度に、どう動いているのか分からない様な武器の扱い。

気が遠くなるほどのフェイントや、武器以外の体術。

「どんな動きなんだよ……」

見ていても意味が分からない。こんな経験は初めてだった……。

「2……3……」

僕が視認出来るのフェイントはこの程度だ。

目に全神経を集中させて2、3回。これを、体を動かしながらやるのか……。

気が遠くなりそうだ……。

「ソフィ。1戦やるか?」

半ば無意識に、本当に何も考えずに口から出ていた。

「え?」

ソフィは、困惑していたが、それもそうか。

困惑するのが普通だろうな。

でも、なんだろう。あの試合を見ていたら、どうしようもなく血が滾ってしまう。

ソフィは、何かに納得したのか、

「よしっ!やろう!」

そう言ってくれた。

僕はソフィを相手に、到底出来ないであろうあの人たちの事を考えながら、血がどうしようもなく滾っている事に気がついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る