第5話

  川に流された女性キャラを、川下で必死に救い上げている、ふたりの女性がいた。

「酷い事するね!」

「全くだよ!」

 そのふたりもまた、この世界に召還されたリアル世界の住民であった。ひとりはGL/NL描き。もうひとりはコスプレイヤーであった。この世界の女性キャラがいなくなるのは、もちろんGL/NL描きにとっては死活問題であった。だがコスプレイヤーにとっても重大事であった。コスプレのネタが男装だけになってしまうのは、非常に困る。

「あれ? もうひとり流れて来た!」

 どこかの岩にでもひっかかっていたのか、先に流されていたデブヲタが、今になって流れ着いた。身体中傷だらけで、元より醜い太った身体が、さらに見苦しくなっていた。

「やだ! 気持ち悪い!」

「ええい! とっとと流れて逝け!」

 GL/NL描きも、コスプレイヤーも、当たり前すぎるほど当たり前だが、デブヲタを助ける気はさらさら無かった。手で触るのも気持ち悪かったので、木の枝でつついて、さらに下流のほうに流してやった。

「あー、気持ち悪かった!」

 デブヲタが流されるのを確認したコスプレイヤーは、先ほど助け上げた女性キャラのほうに視線を向けた。と、GL/NL描きが、何やらよからぬ事をしているのが見えた。

「ちょっと待て! 何をしている?!」

 コスプレイヤーがGL/NL描きを制した。

「邪魔するんじゃねえ! 人工呼吸しようとしたんだ!」

「とぼけるな! どさくさにキスしたり、乳を揉もうとしたんだろうが!」

 確かに人工呼吸など必要無いはずであった。「助かれ!」とひと言言えば、それで済むはずであった。

「ちっ!」

 GL/NL描きは黙って手を引いたが、今度はコスプレーヤーが女性キャラの胸元を開こうとしているではないか!

「ちょっと待て! そういうお前は何をしている?」

「お前のような邪悪な奴と一緒にするな! 私はレイヤーとしてだな、この世界の住民がどんな下着をつけているのか、確認したかっただけだ!」

「貴様も十分、邪悪じゃあ!」

 ふたりの殴り合いが始まった。

 理解不能な女ヲタクどうしの喧嘩を、女性キャラたちは呆然として見ていた。

 やがて、思う存分に殴り合ったあと、ふたりは疲れ果てたのか、その場に座り込んだ。

「しかし女性キャラを川に流すなんて、一体誰がこんな事をするんだ?」

「決まってるだろ。」

「腐女子のしわざだ!」

 ふたりの声がハモった。

「ともかく、一時休戦だ。まずは腐女子を何とかしないとな。」

「同感だ!」

 ふたりは固く握手した。

 今、四つ巴の戦いが始まろうとしていた!

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激劣! 腐女子戦記 滝山一 @Tacky2

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