猛暑の夏、壊れた扇風機の風を浴び、書斎でオレオを牛乳に浸しながら、僕は秋の訪れを待っている。
夏は嫌いだ。
夏なんて季節は、四季の中から消えて無くなってしまえばいい。
そうなると四季ではなく三季になってしまうが、たとえそうなったところで誰が困ると言うのだろう。
困るのはせいぜい、このミンミンとうるさい蝉ぐらいのものだ。
――なんてな。
暑さで頭がやられて、思考回路が熱暴走を起こしているようだ。
益体もない考えが、何の生産性もない考えが、まるで暑さを誤魔化すように脳内を駆け巡る。
「こうやってる内に、秋になってくれればいいんだけどなあ……」
しかし人に与えられた時間は平等で、四季に与えられた時間も平等で、夏だけが特別に早く過ぎることなどは無いのだった。
――と、気がつくと気温が少し下がっていた。
一瞬、秋が来たのかと期待してしまったが、何のことはない、夜になっただけである。
ぼーっとしている内に、何時間も経っていたらしい。
暑さで頭がぼーっとするのは、少しでも夏が短く感じられるように、神様が人間に与えてくれた救済措置なのかもしれない。
なんてことを考えながら、僕は台所に行き、残り物で適当に夕飯を準備した。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、三口ほど喉を鳴らして飲む。
思わず「ぷはぁっ」と声が出た。
想像を絶する美味さだった。
……うん、こういうところだけは夏も悪くない。
こういうところだけは、ね。