エピローグ

 この世界のSOS団は俺が出会ったSOS団とは若干違っていた。

 涼宮と古泉は北高の坂道の下にある光陽園学院の生徒だったし、朝比奈さんは北高生徒だったが書道部に所属していた。長門は同様に文芸部員だったがその雰囲気が若干違っていた。

 そもそも、SOS団自体がまだ存在していなかった。俺が意識を失って、次に目覚めた時にいた部室で、初めてみんなは顔を合わせたらしい。

 しかし、涼宮の傍若無人な性格によって、その場でSOS団が結成された。

 それから一週間経った今日、涼宮の提案通りSOS団結成祝賀会兼クリスマスパーティーをすることになった。会場は北高文芸部の部室だ。

 俺はパーティー開始の時間の五分程前に部室へと到着した。

「遅いわよジョン!」

 入室の第一声は涼宮のこの言葉だった。別に遅刻をしていないのだからいいと思うんだが、確かに他のメンバーはすでに集まっているので、結果俺が一番遅い状況ではある。

 ちなみにこの世界の涼宮は俺の事をジョンと呼ぶ。何故かと聞いたら俺が自分でそう名乗ったそうだ。そんな覚えはないんだがな。

「キョンくんはジュース何飲む?」

 朝比奈さんが紙コップを片手に声をかけてくれた。こういう心遣いが女の子らしいとは思うんだが、涼宮にはそういった気持ちはないのだろうか。

「じゃあ、コーラでお願いします」

 朝比奈さんは可愛らしい声で返事をすると、俺が手にした紙コップにコーラを注いでくれた。

「どうです? クリスマスツリーに電飾を施してみました。雰囲気が出るでしょう」

 古泉が自慢げに部室の隅に飾られたツリーを見てくださいと言わんばかりに指示した。当初ツリーに電飾がなく、この日に合わせて古泉が仕入れてきたらしい。確かに映えるものがある。

 この一週間俺達SOS団は文芸部室をクリスマスカラーにデコレートする作業に追われていた。一番抵抗のあった朝比奈さんも今ではすっかりSOS団の一員となっている。

「有希もほら、コップ持って。ジョンの馬鹿も来たことだし、乾杯しましょう」

 涼宮が椅子に座って本を読んでいる長門をせかす。

 馬鹿という部分は余計だ。

 俺は近くにあったオレンジジュースのペットボトルを手にとって長門のもとにいく。

「オレンジでいいか?」

 俺の問いかけに長門は小さく首を縦に動かした。

「ありがとう」

 コップにオレンジジュースを注いだのを確認してから、長門が恥ずかしそうに礼をいった。

「さぁ、みんなコップ持ったわね」

 涼宮がみんなに声をかける。

 お菓子や、料理、そして特大のクリスマスケーキが乗った机をSOS団のメンツが囲うようにしている。

「じゃあみんな掛け声は分かってるわね?」

 分かってるさ。お前がこの一週間耳にタコが出来るほど言ってきたことだからな。

 そんな事を思いながらも、俺は気持ちのワクワクが止められない。

 こんなに楽しいクリスマスパーティーは初めてだ。

「いくわよ、せーの!」

「メリークリスマスっ!!」

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涼宮ハルヒの憶測 神無月招央 @otukimi

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