第2話 叔父以外の人達からの告白

 驚く程、反響を頂いたので、その他の元軍人の方からの告白もここに掲載させていただこうと思います。



その① 民事訴訟法の先生

大変偉い方なので、M先生と呼称させて頂きます。

私メロン熊をTと呼称させて頂きます。


ある日ゼミの終わった後、M先生と雑談をしていました。

「T君、君はこの世から戦争はなくなると思うかい?」

「そうですね、中々難しいと思いますが、話し合いを根気良く続けていけばひょっとしたら、無くなるのかも知れないとは思いますが」


「理想論としては良い、ただ私は悲観論者だからね、人間は愚かだ、決して戦争は無くならない、戦争もビジネスだからだ、そして現場ではもっと生々しい」


「どういう事ですか?」


「私が帝国大学法学部在学中に学徒出陣で台湾にいたことは前言ったよね」


「はい、本当は通信兵としてフィリピンに派遣される筈だったけど、急に台湾に変更になり、途中で潜水艦を降ろされたって、その後その潜水艦は撃沈……されたんですよね」


「そうだ、その後台湾で通信兵として終戦までいたんだが、終戦後ある朝宿舎で寝ていたら朝ドアを強く叩く音がしたんだよ、ドアを開けたら中国軍(中華民国軍)の軍服を着た軍人が立ってたんだ……」


「……」


「私は思ったよ、もうおしまいだ、死も覚悟した」


「その後、どうなったんですか?」


「その国民党軍の兵士は流暢な日本語で言ったんだ、『Mさん恐れ入りますがウチの新人に練習用飛行機(の操縦法を教えてやって頂けませんか?』とね、私は躊躇したが逆らったらどうなるか分らないし、これから日本がどうなるかも分らないので、この前まで敵だった兵士に練習用飛行機の操縦法を教えることになったんだよ」



「そうですか、それは何とも忸怩たる思いですね」


「私の同期はそんな思いは無かったんじゃないのかな?何人かは寧ろ積極的に軍服を着替えて結構な報酬を貰ってサポートしていたんじゃないかな、人間なんて現金なもんだ、軍人も所詮雇い主がいなければ成り立たないんだよ、愛国心で動いている奴が現代の戦争社会でどれ位いるのだろうか?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

叔父から聞いた話 ITSUMONO @melonguma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る