自殺ソムリエ
奥田啓
第1話 自殺ソムリエ
母の言葉。
「ほんととろいわね。なんで私の子なのになんでそんなトロいの?嫌んなっちゃう」
父の言葉
「おまえはなんもできないんだからさっさと結婚して嫁になって養われた方がいいよ」
先生の言葉
「もっとなんかやる気をもてよ。
なんかつまらないぞ、おまえ」
同級生の言葉
「あんまそはの辛気臭い顔のあんたと一緒にいたくないんだよね
不幸が移るっていうかさ。」
親友だと思っていた人の言葉
「あんまりいるとね、わたしまで…」
思いを寄せてたクラスメートの言葉
「すげぇみてくるけど、なに?怖いんですけどまさか好きとかおもってないよね?そうだったらウケるんだけど」
黒は一種類じゃない。
色んな黒がある。
真っ暗闇の黒。ディープな黒
心に色があるならわたしはそれだと思う。
そうおもってたけどそうじゃないと思ってた。
だけどちゃんと自覚した。
そうしたら屋上にいた。
もうわたしは疲れた
この校舎から飛び降りて
楽になろう
来世はいまよりはいいだろう
いや来世はどうなんて感覚あともう少しでなくなるから意味なんてない
とにかく苦しいいまから解放されたい
飛び降り防止用の鉄柵に登ろうとすると
だめだよ!と後ろから声が聞こえる
わたしを邪魔するのはだれだと
後ろを振り向くと
美少年がたっていた
目を奪われた。
これから命を絶つというのに。
生きる時間を増やしてしまった。
彼は祐天寺 賢太郎。学校内でも有名な美少年だった。
そんな彼が私のために止めてくれた。
いやしかしわたしの意思は固いんだ
最後にこんな人に気に留めてもらえるなんて神様からの贈り物に違いない
「こないで、私はもう疲れたの邪魔しないで」
定型文のように自殺者が自殺をとめられたときにくちにする言葉頻出ランキング上位のセリフを吐く
彼みたいな美少年にいくらとめられても実行できるように腹筋に力を入れるような感じに待ち構えた。
すると彼は
「邪魔するつもりはないけど、その自殺はちょっとありきたり過ぎない?それにその後の始末とかどうするの?正直言ってつまんないうえに、きれいでもないし、迷惑もかかるし、電車に飛び込むのとツートップで最悪の自殺方法だよ。」
とめらるかとおもったら
ダメだしと説教された。
めんをくらうとは
このことだとおもった。
「人生でたった一度の自殺だよ?見せ場なんだよ?突然の病気はコントロール不能だけど、自殺というのは理性でやるものだからさ、もっとこう、綺麗に美しくやらなきゃ」
わたしはいま彼になんの話をされてるのだろう。
世の中には色んな自殺があるんだよ。
人をあっと驚かせるようなものや、甘美な心酔いしれるものが。
命を絶つ行為に、芸術性をはじめてもたせた人は素晴らしい。
僕は究極の自殺を作り上げたい。
そんなぼくは目の前に自殺するひとがいたらいてもたってもいられないんだ。しかも大事な命なのに平凡なやり方をするなんてものみたら本当に我慢がならない。
僕に君の自殺方法をかんがえさせてくれないか?」
そういって彼は笑顔でいう。
その笑顔でべつのもっと素敵な心ときめくことをいわれたかった。
だけどその奇天烈すぎる言葉も彼が言うと、どうにもこうにも頭は受け取れてしまうのだ。
これが、自殺を愛する「自殺ソムリエ」といわれる彼との出会いだった。
自殺ソムリエ 奥田啓 @iiniku70
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