第2話【天を衝きし真天楼】

大陸のど真ん中にそびえたち、最上階の部屋には伝説の【竜星杯】が安置されているという【真天楼まてんろう】。

その真天楼周辺の土地は絶対不可侵エリア(通常の手段では入れない)。入ろうとするなら圧倒的なる力で他国を黙らせてから入るしか手がない。

だから、4ヶ国は壮絶なる戦争をする。休戦した時もあるが、基本それ以外ず~っと戦争している。

だから、こういうことも十分あり得る(!?)訳で…

      *            ♰          *

「…………こんなとこでも戦争してるのか、どうやって通ろう…?」

カイルの目の前には、涼やかな雰囲気を漂わせる森の奥から、超大音量の鬨の声と、金属が打ち合わされる音と、魔術スキルが着弾する音が聞こえる図。

—————————よし、こうしようか。

暫く考え込んだ後、決意したような様子のカイル。

天翼ウィングコール魔力マナを流し、青い宝石で彩られた天翼が虹色に発光する。


とんっ、と軽く地を蹴る音。同時に天翼が羽撃はばたき、疾走の加速に拍車をかける。

腰に佩いていた朧月を両方抜き、今まで黒い鞘に隠れていた艶やかな銀の刀身があらわになる。

太陽の光を受けて妖しく輝く刀が、白銀の軌跡を空中に描き出し、それを多量の鮮血で彩った。

殲滅が目的ではない————だから、中央を突っ切って突破する。

朧月は妖刀の性質スキルを持つ。そこらから空中へ飛び散る真っ赤な鮮血、肉片から振り撒かれる赤い血を全て余らず片っ端から吸い取る。


さて、周りのまだ戦う兵たちは謎の乱入者と彼の持つ血を吸う覇双に気づいただろうか……?

そして、分厚い戦場の戦線を横から突き破っていく彼を高みから見下ろすような、これまた謎に満ちた感情の読めない視線があった。


真天楼は、今日も戦いを続ける愚かな人間へいしたちを、見下ろしている。



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4ヶ国戦争と竜星杯の幻想 ルーヴィアリーナ @gyftduj1105

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