第14話 異質なるもの②

「嘘をつくな!! ネーレス様があなたたちのような下賤げせんなギルドに依頼するわけがない。私を殺せだって?・・・ふざけるのも大概にしろ」

イリカはチェイスから告げられた情報に憤慨した。

自分の目標としている人物が自分を殺そうとしていることを信じるなんて、ばかばかしいと共に侮辱された気分ではらわたが煮えくり返ったのだ。


チェイスはそんなイリカの神経を逆撫でするような言葉を発する。

「俺も最初は信じてなかったがな、俺はヤツを本物だと思ったね。詳しい話を聞きたいか?」


「ええ、全面から否定してあげますよ」

イリカは冷静をよそおっていたが怒りはまだ消えてない。


チェイスは続けて言う。

「じゃあ、ネーレスが来たときの話を―――」

イリカが話を遮るように「ではありません!」と否定した。

チェイスはイリカの強気な反応に驚き、苦笑した。

「じゃあ、ネーレスとの話をしようか」

チェイスは淡々と語り出す。


             〇●○


あれは3日前、タラデルより少し北の国、オガイに居たときのことだ。

俺はいつものようにオガイでゆっくりとした日々を過ごしていた。

オガイってのは俺にとっては最高の国だ。女遊びだ、ギャンブルだ、強盗だ、殺人だ、と何かしらの刺激ある毎日が送れるんだからな。普通に育った人間にとっちゃ地獄みたいなところだろうけど。俺みたいな、はみ出しモンにとっちゃ住み心地の良い場所だ。


そんなところでも、ユグナードの名は知られている。なぜならオガイこそユグナードの本部であるからだ。どんな悪人だろうとユグナードに逆らおうとする奴はそうそういない。

ユグナードはカジノや女遊びができる店のほとんどを経営しており、オガイに店を出すにもユグナードの許可がいる。その店には年貢を払ってもらい、その代わり、ユグナードが強盗などの害から店を守っている。オガイには王はいない。つまりはユグナードがこの国の実権を握っていると言っても過言ではない。ユグナードの長である俺は大変だっつーことだ。


俺は贔屓ひいきの店の「スナッチ」でいつも通り、酒を煽っていた。

「相変わらず、ここの酒は格別だな。」と俺は店主に伝える。


「あなたが守ってくれるので、うちも安心して経営ができるんですよ。

あっ、そうそう、フィーネの件もありがとうございました。」

フィーネとは、この店で働いている女だ。容姿端麗で気前も良いため、チンピラたちが惚れこんでしまい、無理矢理犯そうとする連中が多い。そんなフィーネを守っているのがユグナードだ。年貢を納める店はどんなトラブルも解決するのが決まりだからな。そういう俺もフィーネのことは気に入っているから私情も少し入ってる。

「そう言えば、今日はフィーネは来てないのか? いつもなら来てる時間だろう?」

俺の問いに店主は戸惑いながら答える。

「それが、まだ来てないんですよ。何かあったのかな?」

「何かあったならすぐにわかるさ。」

「ああ、そうでした。あなたのがフィーネを守ってるんでしたね。」


そう。俺には能力がある。それのお陰でユグナードという組織を立ち上げ、おさになれた。


能力とは選ばれたものだけが授かる人知を超えた力である。

それに俺は選ばれたのだ。


俺の能力は簡単に言うと黒い物質を形成する能力。

その黒い物質は恐ろしい程、固く、剣などを一瞬で破壊するほどの威力がある。それに加え、粒子状に霧散することもできるし、黒い物質を手足のように操ることも可能だ。さらに黒い霧は周りの風景に溶け込むのようにできる。つまりは人の目には黒い霧はただの風景に見えるということだ。


俺はこの能力の霧状の目に見えないバリアでフィーネを守っている。バリアは強力なのでフィーネは安全というワケだ。もしバリアが破壊されることがあっても、バリアが破壊されたことが何故か感覚的にわかる。


まだバリアは無事なようだしな。


俺は店主に「また寝坊でもしてるんじゃないか?」と笑いながら言った。店主も「そうですね」と笑う。


『バンっ!!』


急に大きくドアが開く音がした。店にいた客も驚き、ドアの方を見る。

「た、たた大変だぁ~~~!!!」

店に俺のよく知った声が響いた。


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デッド・オア・デッド さいとうカフェイン @rsbb

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