第13話 異質なるもの①

「結構やるね・・・さすがは優秀な女騎士さんだ」

          

 急に現れた男に斬りつけられた。その剣が私の首に当たる瞬間に自分の剣で相手の剣をはじいて事なきを得たのだが、この男、一体、何者であろうか?

 少しでも反応が遅ければ自分の首は地にしていたことであろう。それほどにこの男の剣には殺意が宿っていた。

 

 私はこの男に問いただす

「あなた、私を王国の騎士イリカと知っての狼藉ろうぜきですね?」

 男はケラケラとふざけたように笑い、答える。

「もちろんですよ。私はあなたを殺すために剣をふるった・・・それだけが事実ですよ。

 しかし、あなたは見た目よりもタフなようだ。さっきまで殺されかけたいたのに震えてすらいないとはね。本当に一太刀で楽に殺してあげようと思ったのですが、なかなかの腕前でした。私の剣をはじくなんて、思いもしませんでしたよ。」

 笑いながら話しているが、彼の目は笑っていない。鋭い殺意だけがこもっている。いつでも殺そうと考えているのだろう―――

 私もナメられたものだ。これでも王国の騎士長に次ぐ実力者である。

 いつも、城の男共、数人相手に訓練はしている。女だからとナメる連中が多いがそういう奴を剣で倒すのが私の楽しみでもあるのだからな。


 もの思いに考えていると男が急に話し出す。

「あなた、ところで最初に背負っていた白い死神さんはどこにいるんですか?」

―――っ!!

 私はさっきまであったウィルさんの感触がないことに気が付いた。

 周囲を見回したがどこにもいない。

 なぜ、急に消えたのだろうか?・・・・私は混乱した。しかし、こんなことができるのは目の前にいるこの男しかいない。

「ウィルさんをどこにやった!! 答えろ!!!」

 男はまた笑いながらもさっきより荒い口調で言う

「女性がはしたない言葉を使うもんじゃねーぞ。ウィルさんは俺の背中でお休み中だ。ホレ」

 男は背中を見せた。すると確かにウィルさんがそこにいた。

 いつ、アイツは私からウィルさんを奪ったのか、わからない。

 妙な気持ち悪さだけが私の心を駆け巡る。

 ―――アイツの底がしれない。闇の底に放り込まれたような気分だ。私は彼と戦うのが怖いのだと理解する。


「いやはや、どうしたんですか? 青白い顔をして体調でも優れないんですか?

 あーダメだ、笑いが我慢できねぇわ!!! クク、ハーハハハ!!!」

「一体何が目的なんですか? 私を殺してあなたに何のとくがあるんですか?」

 彼の目的がわからなかった。私みたいな女を殺したところで一銭の得にもならないはず、かといって、人に恨まれるようなこともしていない。しかも騎士を殺せば王国も黙っていない。この男にメリットの欠片もないのだ。


 男はゆっくりと語り出す。

「俺は賞金稼ぎのギルド『ユグナード』のおさをやっているチェイスというもんだ―――」

 ユグナード!?

 ユグナードはこのタラデルを含め様々な国にある賞金稼ぎ達のギルド。

 有名な賞金首たちを次々に殺していき、実力は折り紙つき。さらに、血の気の多い連中が多いため、民たちから嫌われているあのユグナードですって?


「ウィルさんだけ狙うならわかりますが、なんで賞金首じゃない私が命を狙われるんですか?」

 素朴な疑問だった。ウィルさんは相当額をかけられている賞金首だ。しかし、私はただの騎士だ。

「まあ、待てや。話は途中だ」

 男は続けて語る。

「俺宛に依頼が来てな・・・それがアンタと白い死神を殺せという依頼だ。

 依頼主はタラデル王国 

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