第12話 眠る
「はぁ……はぁ……もう限界」
私―――イリカは化け物の件の後、意識を失ってしまったウィルさんを担ぎ、森を抜け出そうとしていた。が、数時間歩くと、あまりの疲労に座り込んでしまう。
「あー、疲れた。さすがに人を担いでいくのは大変ですね~ このままじゃ今日中に城に着きそうにないな」と思わず、口にしてしまう。独り言を言ってしまった。
私はふとウィルさんの方を見ると、ぐっすり眠っていた。彼の寝顔はとても安らかで、かわいいと思ってしまった。頬をツンツンと指で突いても、反応はない。そういえば、最初に彼と出会ったときも彼は寝ていましたね。結構、寝る子なのかもしれない。しかし、そろそろ起きてもらわないと困るな……。
「そろそろ起きてほしいんですが……おーーい! 起きて! 起きてくださーーい!」
体を揺らし、大声で起こそうとしたがやはり起きない。
「これは困ったなぁ」と言ったあと、私は深いため息をついた。
日の暖かさと森林の居心地の良さに
目が覚めるとそこは暗闇だった。どうやら私は寝てしまっていたらしい。ウィルさんはさすがに起きているだろうと思い、ウィルさんの方を見たら、まだ眠っていた。
このままここで朝まで過ごそうと思っていたが、ここでは夜になると狼たちが群れで動き出すのを思いだし、なるべく早く森を出る必要がある。
私はウィルさんを担ぎ、再び森を抜けようと歩き始めた。
「まったく。迷惑の掛かる眠り小僧ですよ、あなたは―――」などと愚痴をこぼしながらも前に進んで行く。
道中、暗闇と疲れで足元がおぼつかなくなったが、ようやくケスの町に着き、事なきを得た。
ケスの町の家々には明かりが点いていたので、まだ宿は
宿に着き、宿の主人に2人分の部屋を用意してほしいと頼んだら、ウィルさんを見て主人はこう言う。
「白髪の子供……そいつ、白い死神だろう? 俺の宿じゃアンタらを泊まらせてやることはできないねぇ。」
彼が『白い死神』とバレてしまっていた。思いもよらぬことに驚いたが、私には秘策がある。
「私は城の騎士です。だから泊めてください!」
城の騎士と伝えれば、さすがに泊めてもらえるだろう。そう思ったが宿の主人は首を横に振り、「ダメだ」と言う。
「なぜです? もし少年が暴れても私が止めますし、タラデルでは私達、騎士に背くということは罪になります! それでも泊めないのですか!?」
「ああ、泊めない。お前たちを泊めたら私は殺されてしまう。殺されるぐらいなら城に幽閉されても構わない!!」
主人の言葉を疑問に思い、聞き返す。
「殺されるってどういうことですか?」
主人は震えながらこう答える。
「言葉のままさ、お前たちの味方をすると殺されるんだっ!! 頼むから帰ってくれ!!! あいつらが来る前に……」
その言葉のあと、宿に突然の来訪者が現れた。
「みーつけた。白い死神!!!」
来訪者はそう言うと眠っているウィルさんに剣を振るってきた。
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