第2話自由と絶望は唐突に1
「なんなのよ・・・。誰か教えてよ・・・」
その問いには、ひどく黴臭い通路にわずかに響くだけで答えるものなど勿論居なかった。
「だって今朝まで何も無かったじゃないの・・・」
「いつもみたいにすこーーーし寝坊して、アンリに起こされて」
「でさ!皆集まって朝食食べてさぁ・・・」
「面倒な習い事をちょーーーっと抜け出して・・・・」
誰も聞くものも無い空間で今日起きたことを一から確認する。
そう、朝まではいつもの日常だった。
なんで?
どうして?
確かに自由は望んだわ!
でも・・・こんな形じゃない!
お父様やお母様、アンリや兵達、そう皆がいてそれでいて窮屈しない生活。
それが私の望み。
だが私のいる場所は薄暗くその上黴臭く、でも前よりは自由ではあるのかもしれない。
・・・そんな場所・・・。
自慢だったブロンドの長い髪には埃や、くもの巣が絡まっていた。
それどころか部分によっては焦げさえできている。
細かな刺繍が施された白いドレスは泥と血が混じりあい見るも無残な装飾に変わり果ててしまった。
涙でぐちゃぐちゃな顔を手で覆い私は疲れ果てそのまま座り込む。
今朝までの窮屈ながらも幸せだった記憶を私は思い返してみる。
それが現実逃避だとしてもそうせざるをえなかった。
ただ一人こんな場所でこんな格好でいるのが辛い。
うずくまり膝を抱えながら私は・・・。
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「・・・そろそろ起きたほうがいいのかな?」
カーテンの隙間から差し込む光が憎い。
それこそ確認の必要もなく「今日もいい天気ですよ~!」と自己主張の強い太陽が本当に疎ましい。
ベッドとシーツは程よい暖かさとさわり心地で私を包んでくれる。
そんな2人に感謝しつつも私は睡魔に身を任せる。
ウトウトと幸せな時間、、、、。
わかってる。
こんな時間も、、、、もう長くは続かないのだ・・・。
そろそろ刺客が、姿を見せる時間なのはいつものことだし。
時計の針の音が少しうるさいが耳をすませば・・・ほら。
部屋に近づく大きな足音。
かなーーーり焦ってるのが手に取るようにわかる。
これが日常なのだから。
ドタドタ走る音はやがて部屋の前でとまる。
「失礼します・・・。」
控えめな扉を開く音と躊躇いがちな挨拶。
刺客アンリの登場である。
気づいてはいるが構わず私はベッドのぬくぬく感を堪能中。
が、それを許すまじと刺客アンリが攻め入る。
「起きてくださいましー!まーた私が叱られるんですよ~!」
「今度は外出時間短縮じゃーすまなくなりますーーー!」
「リルカーーーーおきてーーーー!!!!」
未だ反応を示さない私に業を煮やしたのかアンリは私の体を大きく揺さぶり始める。
「だってさ~、ぬくぬくだよ?さらさらよ?今日はこのままでいいと思うの?」
うん、わかってはいる。
意味の無い返事なことは。
ここで「まぁ、そうですよね。」なんて返す人は居ないことを。
それでもこちらもは甘い時間を稼ぐことには必死である。
だがアンリの揺さぶりの手は緩めることはなかった。
むしろ、ちょっと勢いづき始めてる。
そんなアンリの魔の手から逃れるべく軽く寝返り~・・・。
と同時にアンリがコチラを押し出す形となり。
「あ・・・あ・・・、りるか?!」
そんな情けなーい声がチョット遠く聞こえた・・・。
同時に私をや優しく暖かく受け入れてくれたベッドとシーツの感触が無くなる。
そのかわりに妙な浮遊感を得ていた・・・。
「・・・あれ、・・・??」
と、考えがまとまったと同時に私の体は床に強く打ち付けられていた。
右肩からの着地により私は一気に目がさえてしまう。
「・・・あの、おはよう?リルカ」
違う。
そうじゃない。
「ごめんなさい」とか「大丈夫?」でしょ・・・。
と、思いつつもいつまでも起きない私が全面的に悪いのであって、さすがにその言葉は呑みこんだわ。
「おはよう、アンリ。目覚めは最高よ・・・」
でも、腑におちない私は少し意地悪く返すことにした。
アンリは「シュン」とした顔をして見せるがすぐに慌てふためく顔に変える。
(ホントにみていて飽きない娘ね)
情けない醜態をさらしたものの、手早く着替えをアンリに手伝わせ部屋を後にした。
リンゴと姫と従者の関係。 あむ @rituki0078
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