遅刻です。
私の起床時間は決まっている。なんせ大学までの距離が一時間ある上に時間割は全てニ限から。どれも必修もしくは選択必修と言う抗えぬ大学の采配である。
なぜこんな時間割になってしまったのか、信じてもいない神様を罵ってやりたいぐらいだが、呪ったところで変わりはしない。全休が一日あるだけ、真面目な友人よりマシだと言い聞かせて、毎日の早起きに耐えてきた。
が、なんだろうか。今私が握りしめているスマホが映し出す時間は。
充電が15%と言う恐ろしさも去ることながら、本来起床時に見る筈のない、見てはならない数字が並んでいる気がする。
縁側てくつろぐ猫のように瞼をこすり、二度瞬き、電源をつけ直して、やはり映るのは普段より一時間遅い時間。
疑いようもない。遅刻だ。
人生の中で一番の絶叫なのでは無いかと思う程の悲鳴を上げた。
猿のようにベッドから飛び降り、タンスから着替えをあさり、脱ぎ散らかしながら髪をとかして、机の横の手提げ鞄をひったくる。扉をぶち破らんばかりの突撃で飛び出すと、洗面所に滑り込み、ほとんどぶっかけるだけ水をぶっかけタオルで殴る如く拭う。転がりながら玄関で靴に足を突っ込んでいると、買い物から帰ってきたらしい母親の呆れた声が投げられたが、返事をしている余裕もない。
早業で紐を結び走り出した私は、玄関扉に大音量のタックルをかました。
「あ、ごめんなさい。鍵かけちゃったわ」
リビングから顔だけ出した母がそんな事を言った。
ひととき短篇集 茜木 @madderwrite
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