7.ナイトウィザード
「む!?」
突然の爆発音を聞いて、マクスンはすぐに察した。敵の襲撃だと。
「来たわ! 副師団長!」
サフィーがマクスンの方を向いて叫ぶ。
「うむ、我々もすぐに機体の所に戻ろう! ブリーツはそれでいいな?」
「この場合、選択肢は無いでしょ」
ブリーツは、ナイトウィザードのコックピットと思われる所、胸の上部から顔にかけての部分へと走った。
「ここだな」
コックピットのハッチを手動で開け、中に入る。
「ほう……ナイトウォーカーとそれほど変わらないか」」
魔力系統が、多少、複雑になってはいるものの、殆どの操作はナイトウォーカーと同じように出来そうだ。
「これならすぐに動かせそうだ! 二人共、伏せててくれ!」
ブリーツは、ナイトウィザードの上半身を少し起き上がらせると、腰に備え付けられている剣を抜いた。そして、剣を持った右腕を振り上げ、そのまま後ろへ振り切り、被さっていたホロを斬り裂いた。
切り裂いた部分から風が流れ込み、ホロが揺れる。その隙間から見える空は快晴だ。眩しい日差しがナイトウィザードとサフィー、そしてマクスンへ降り注ぐ。
「あーっ! 布を!」
「この場合、仕方なかろう、取り外してる暇など無いからな」
「こいつで二人の機体に着くまで援護しますよ、肩に乗って下さい」
ブリーツはそう言ってナイトウォーカーを屈ませ、頷いた。やはり操作性は変わらないらしい。
「うむ、行くぞ、サフィー」
「はい!」
マクスンとサフィーが急いでナイトウィザードの肩へと飛び乗った。
「行きますよ!」
ブリーツがナイトウィザードを直立させる。
斬り裂かれた布の透き間から現れた灰色のボディが、太陽の光を浴びて輝く。その様子を見ていたゼゲの動きから、ブリーツは動揺しているのだと察した。
「よいしょっと。敵さん、意表を突かれてるみたいだ」
ブリーツが、ナイトウィザードにホロをまたがせ、片足を荷車から降ろさせながら言った。
「油断するな、最初だけだ。これ一機増えたところで大した脅威にはなるまい」
マクスンの言う通り、こうやって気押されているのは一瞬で、状況を把握したゼゲは、すぐさまこちらに攻撃を仕掛けてくるに違いないと、ブリーツも思っている。
「仰る通りで。で、機体はどれです?」
「あっち! 左に見えるでしょ!」
ブリーツが、人間の目にあたる、顔のガラス部分から、左側を覗いた。
「おお! 黒くて格好いいのが見えるぞ!」
「何よそのわざとらしい反応、ふざけ……横っ!」
「おっと!」
ブリーツは、とっさにナイトウィザードの体を逸らし、ゼゲのブレードを紙一重で避けた。そして、自機の剣を横に振り、ゼゲを斬り付け返した。
斬り付けられたゼゲは、その刃を避けきれずに胴体を真っ二つに斬り裂かれ、倒れた。
「へえ、やるじゃないの。少しは見直したわ」
「だろ? 剣は得意なんだって!」
ブリーツはそう言いつつも、ブースターを最大限に吹かしてナイトウィザードを走らせた。
肩には人が乗っている。ブリーツは期待を走らせつつ周りを見渡して警戒すると、マシンガンを構えているゼゲが目に入った。
「おっと!」
ブリーツが急いでウインドバリアを唱える。
「おっと! ――荒ぶる風よ、厚き壁となって我が身を包み込め……ウインドバリア!」
ブリーツが唱え終わると、どこからともなく風が吹き出し、ナイトウィザードの右側を、マシンガンを持ったゼゲとの間を遮るように渦巻いた。
ブリーツは、ナイトウィザードがウインドバリアを纏ったことを確認すると、ナイトウィザードを更に前進させた。その瞬間、ゼゲのマシンガンの音が響く。
「うおおっ!」
マシンガンの弾がウインドバリアに当たった時、予想以上の抵抗を感じたことにブリーツは驚いた。今にも破られそうなほど、ウインドバリアを脆く感じる。
「ちょっと、気を付けなさいよ。こいつの性能じゃ、防御魔法なんて気休めみたいなものよ。今のはどうにか弾道だけは逸らせてたみたいだけど、ゼゲの豆鉄砲じゃなけりゃ、普通に貫通されてたわよ!」
「マジか……こいつ、予想以上に器用貧乏に特化してやがる」
「あの……意味分かんない言い回しはやめて、とっとと私たちの機体に向かってよ」
サフィーが、半ば呆れたようにそう言った。
「ああ、分かってるよ」
ブリーツは気を取り直して二人の機体へと向かった。ブースターを最大に吹かすのを抑え、なるべくスピードに緩急をつけ、左右に機体を揺さぶるように意識しつつ操縦する。ゼゲのマシンガンが当たっただけで、これだけ不安定になるのだから、この機体で使ったウインドバリアはあてにはできない。遠距離からの攻撃には、不規則な動きをしたり、フェイントを交えたりしてどうにかするしかないだろう。
「よし、ここでいいだろう。ブリーツ、降ろせ」
二人の機体から数歩のところまで進んだところでマクスンが言った。この距離からなら全力で走れば人間の足でもすぐだろう。
「ほい来た!」
ブリーツはそう言うと、ナイトウィザードを屈めて二人の機体に跪かせた。
「ブリーツ! 起動するまでのサポート、頼んだわよ!」
「我々が乗ると分かれば、敵も放置はするまい。他の機体と連携して敵の注意を惹き付けつつ、
サフィーとマクスンは、そう言いながら肩から飛び降り、それぞれの機体へ駆けていった。
「了解。さてと、こいつの性能、どんなもんかな?」
ブリーツは機体を反転させてゼゲの集団と対峙させた。
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