才能の鱗片

ウィランたち約30匹、さらにメガウィランを倒したレイナたち。

しかし、これを見た若き王子はとてつもない喜びぶりだった。

「エッ!!マジでスゲー!!マジ感謝!!!てか、あんたら何者!!魔女が作ったあの兵隊を倒したの!!!!俺が国宝の氷の剣使っても、鎧を着た兵を1匹相手にするのが精一杯だったのに…自分が情けないよ…一国の王として…ハァーー…」

と、魔女を倒せるかもしれない勇者たちに会えた喜びと、自分の不甲斐なさに対する落ち込みが混ざりあいとてつもなく変なテンションに…

レイナが、

「この人どうすればいいかな…」

シェインが、ここで

「新人さんは、ここの想区の出身でしたよね…なんかないですか」

と、無茶ぶりをしてくる。

「僕は、あんまり人に会わなかったので何とも言えないんだけど…」

「想区一の美人のシンデレラの知り合いのクセにですか?フゥーーン…」

と、シェインの妖刀よりも切れ味のある突っ込みが飛んでくる。

「シンデレラ意外知り合いがいないんだ…想区一の美人が唯一の知り合いなのね…」

レイナがニヤニヤしてこちらを見ながら言う。

「なるほどな…まあ同じ男として解らなくもないな…」

タオが同情したように言う。

「いや別に、シンデレラを狙って会ったとかでわないんだけど…」

と、言い訳をしようとしたとたん

「エッ!マジで!!し、し、シンデレラのし、しし、知り合い!!」

王子にあらぬ慌てぶりで僕に聞いてきた。

「いや、シンデレラっていってもあなたの知って…」

「すぐに城に来てくれ!」

「だけど…」

「だけどじゃない!」

「でも…」

「でもじゃない!」

「だがしかし…」

「そんなの物語でしか使わない!いいからつべこべ言わずに来い!!」

僕と王子の間でこんなやり取りをして、1秒の休憩なしに城に連れて行かれた。


「おいおい。城に行くんじゃなかったのか。」

タオが言った。

その通りである。あれから、僕たちは王子について一時間以上シンデレラ城と真逆の山の麓に来ていた。

「まあまあ。見てくれよ。」

すると王子がポケットから鍵をとり出し、木の幹にあった穴に差し込んだ。

すると、山の地面の一部が動きだした。約1分ほどで山に人が数人並んで通れるサイズの穴が開いた。王子が穴を入っていったので、僕たちもついていく。

「俺が子供のころに作った城に続く隠し通路さ。これを使えば俺の部屋に誰にも会わずにたどり着けるさ。」

王子が得意げに言った。

「すごい!すごいですよ!!いったいどうやって作ったのですか!!!」

シェインが興奮していいだした。機械好きなシェインには、たまらないのだろう。

「いやいや、それほどでもないよ。実は5歳のときに作って…」

「5歳でこんなもんを作ったのかよ!!!あんた天才ですか!!!」

シェインは興奮し過ぎて、もはやキャラが崩壊している。

「そういえば、さっきもウィランを相手にできたとか言ってたよね。」

レイナが思い出したように言う。

「はい。昔から格闘技術だけは特技として誇れるものでしたから。でも、使った氷の剣は刃に触れた者は皆凍ると言われる伝説の剣です。」

と、王子は照れながら自慢する。

普通の人間はウィラン相手に戦おうと思わないし、ましてや相手にできることはない。

「あなた強いわね。でも、その剣は何処にあるの?」

レイナが聞く。

王子の冷や汗が頬を伝う。

「実は、逃げる時に城に落としてしまって…おそらく魔女の手に渡ってしまいました。剣は、魔法を使う際の触媒としてもとても、優秀ですから。」

「何でもありの最強の剣じゃないですか。」

いつの間にか落ち着ていたシェインが言った。

「それを手に入れた魔女には、どんなメリットがあるの?」

レイナがさりげなく聞く。

王子が、

「本来の魔女の目的の品は、『三種の神器』と呼ばれる国宝を全て手に入れることです。全て手に入れることで老いと死から逃れることができると、言い伝えられてます。しかし、本来は『十二神器』と呼ばれた武具の残った物のことを差します。その3つ意外は、全て戦争で壊れました。」

と、説明した。

「残りの2つは何処にあるの?」

「神器の1つ、暗黒の盾。別称『無敵の盾』は取られてしまいました。でも、もうひとつの神器である雷のタガーだけは死守しました。」

すると、彼は腰につけていた刃渡り30cmほどのタガーをみせた。

「実はこのタガーは、『三種の神器』の中で最も魔法の触媒として優秀なのです。記録では、一般的な木の触媒の20万倍以上の魔法の威力が出たという人もいたそうです。」

「それは、魔女に取られたらとてもまずいですね。」

シェインが言った。

「魔女の方も必死に取ろうとして来て私も三度ほど死にかけました。」

王子がさらっと言う。

「エッ!」

さすがに今度はスルーせずに反応した。

「でも、このタガーのお陰で死なずにすみましたね。元々、骨折位までは治せる回復魔法は使えたのですが、このタガーを触媒にしたら肋骨8本折られ、肺の風穴、挙げ句に内臓をグッチャグチャにされても治せたんですよ。」

ずいぶんとワイルドな怪我から生還したくだりを、のおのおと話していたら突然フリーズした。

「いったい、ど…」

レイナが言おうとしたのをすぐさま王子がレイナの口を塞ぐ。口に人差し指をあて「静かにしろ」と言いたいらしい。そして、進行方向を指差た。よく見るとウィランがいる。

「ほんじゃ、よろしく。」

王子が小声で言うと、タガーをひとふりして姿を消した。

それと、ほぼ同時にウィランがこちらに歩きだした。

「仕方ない、やるわよ。」

レイナが言うと同時に、ウィランを相手に戦い出した。

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