そもそも事の発端は
薄っすらと
その風は、朝露にぬれた葉の上を滑るようになでて行く。
風に触れた朝露は、
見渡すと
辺り一面、茶畑が広がっているのだ。
その
そんな、初夏の美しい、茶畑の朝だ。
そこに、茶畑の合間にある山道をパタパタと駆けてくる幼い少女が、二人。
二人は、同じような薄桃色の
よく見ると、面差しがそっくりだ。おそらく双子なのだろう。
二人は我先にと走っている。
その一生懸命な姿が、少し微笑ましい。
それにしても、彼女たちは何をそんなに急いでいるのだろう?
◆◇◆◇◆
先ほどの幼い少女が彼女たちの家に向かって駆けていた頃。
家の前の高い丘に立つ一人の少年がいた。
◆◇◆◇◆
「あっ!
「兄さま――――っっ!」
幼い二人の少女は、丘の上に見えてきた兄に大きく袖を振った。
丘に続く山道を駆け、兄の元へ急ぐ。
そのまま、少女たちははぁはぁと息をしながらも、
「
「澪駿お兄さまが、いらっしゃいましたっ!」
と、大きな声で告げた。
それに少女たちの兄――――晏如は、くしゃっと妹たちの頭を撫でて、こう答えた。
「そうか。
「「はい!」」
鈴香と秀香は元気よく返事をする。
それから三人は、みんなで仲良く家に入っていった。
◆◇◆◇◆
彼は、
普通なら里長を継ぐことはないが、四つ上の長兄は幼い頃に本家に養子に出されたため、一応跡継ぎ、ということになっている。
茶、という姓の通り、彼は茶一族の者である。それも茶郡一の名家、茶家の。
この姓は、龍国の二十三ある禁姓の一つ。つまり、その一族以外、
龍国の国主(君主。王さまのこと)を、
その龍国を治める齋王が、諸侯に姓を与えたことから始まったこの制度。この禁姓を持つということはすなわち、大貴族を示すこととなった。
この禁姓を持つ一族は当然、お金持ちの大貴族なのだが。ただし、晏如の家だけは違った。
茶郡はド田舎だ。
よって茶家は貴族ではなく、豪族のような感じになっている。
もちろん茶郡では一番の家柄だか、実は彼の母の家の方がもっとすごい。
なんと、彼の母は
ただ、彼女は傍系――――それも端っこにぶら下がっている程度の家であったので、田舎貴族の嫁になれたらしい。
龍国では、こう詠われる二つの家がある。
『文に
その家の名は、紅家と白家。
王族である齋王家の次に
この二家は
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