一章

謁見の間で



――――どうしてこんなことになってしまったんだろう?

 晏如は心の中で、大きなため息をついた。



◆◇◆◇◆



 ここは龍国りゅうこくの離宮の一つ、白竜宮はくりゅうきゅう

 龍国の国主一族、齋王家さいおうけの直轄地にある、そう大きくはない離宮だ。


 普通、成人した王族に与えられる離宮。

 そこに晏如はなぜかいた。

 それもこの離宮の主人と謁見するために。



◆◇◆◇◆



 晏如は、緊張していた。

 それもそのはず。

 今、叩頭している晏如の目の前にいるのは、普通なら一生お目にかかれない、雲上人うんじょうびとと呼ばれる人だ。

 そんな中、緊張でガチガチに固まった体と心をなんとかほぐそうとしつつ、晏如は努力していたら。


「………ふうん。そなたが晏如あんじょか。くるしゅうない、おもてをあげよ」


 気だるそうな………お声がかかる。

 晏如はゆっくりと顔をあげた。


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