妄想×思考実験

夢蒟蒻

不思議な路地の風景

不思議な不思議な狭い路地。誰も見向きもしない目立たない場所に、ひっそりと延びている。

今日も一人、迷い込むようにこの路地にやってきた。


「こんな所にこんな良い雰囲気の路地があったのか。」


迷い人は二十歳の青年。昔ながらの町並みを写真におさめるために散歩をするのが趣味のようだ。


よく観察しながら歩いていたため、路地の違和感は感じ取ってはいたようだが、ソレに気付いたのは路地を抜けたときの事だ。


「・・・。戻ってきた。」


この路地は入口と出口が同一だ。だが、それだけではない。この路地は、路地の真ん中を中心に点対称なのである。


青年はそれから以下の観察・実験をした。


・路地以外の風景はどうなっているか。

 →路地は狭く家が密集しているため、路地以外の風景は殆ど見えない。空は薄暗く雲は一様だ。

  →路地以外の風景も点対称といえる。


・入口からボールを転がすとどうなるか。

 →ボールは増えない。

  →あくまでも点対称なのは路地の風景と認められたものだけのようだ。


・入口からチョークで線を引いていくとどうなるか。

 →出口から真ん中に向けて線が引かれてきた。

  →路地に書かれたチョークの線は路地の風景と認められたらしい。


・路地の外に靴を置くと、出口にも存在するだろうか。

 →出口にも存在した。

  →入口と出口は同一なので路地の外に置かれた靴は出口にも存在するようだ。



青年は、この不思議な路地をたくさんの写真におさめ、帰っていった。

しかし、また、この路地にたどり着くことは出来なかったようだ。




さて、ここからは思考実験の時間だ。

この不思議な不思議な路地でさまざまな思考実験をしてみよう。

・チョークではなく食パンを千切ってみると?

・チョークを砕いたらどうだろうか。

・外に置いた靴に紐を付けて引っ張ると?


不思議な妄想は思考実験に耐えうるだろうか。

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