第16説 虎耳の伝聞

「ここの司書の先生は優秀で、地方新聞を一ヶ月間は貯め置きしているの」

そう言うと、虎耳とらがみは一ヶ月前の泉州新聞を取り出した。そして大机に新聞紙を広げる。

「和泉君は一ヶ月前のある事案を知ってる?」

「一ヶ月前の"ある事案"?」

「そう、コウヤマ事件。」

「"神於山事件"?」

「そっか。知らないのは当然ね」

 そう言いながら、虎耳は新聞のページをめくりつつ、事件の概要がいようを説明してくれた。

「半年前、隣接市のかい和田わだにある神於山の中腹で身元不明の白骨遺体が見つかったの。その見つかった場所がはいやしろ跡なんだけど、そこで“あるもの”が見つかったらしいの」

「それで何が見つかったの?」

「嘘でしょ!」

 突然、虎耳が声を上げた。新聞を両手で持ち上げると、なぜか当該とうがいの記事が新聞から、くりかれていた。すると、何やら虎耳が切り抜かれていた記事のあった場所に式神を貼りつけた。なんと、他の記事の文字が浮き上がり、その式神へと貼りいていく。


"神於山の山中で、身元不明の白骨遺体が見つかる。遺留品は五寸釘と大蛇の抜け殻"

 

 見出しを読んでいる最中、何者かの気配がした。点滅てんめつする蛍光灯けいこうとう―。虎耳は式神を取り出し警戒けいかいした。

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