第05説 深夜の邂逅(カイコウ)

"うわああああ"

 自分は声にも成らない断末魔だんまつまを叫びに叫んだ。

 しかし、よく見てみると、その女性は夕方に神社で見かけた白い着物を着ていた方に似ていた。

 そう思っていると女の方は、なにやらつぶやき始めた。


「コイシクバ タズネキテミヨ イズミナル シノダノモリノ ウラミクズノハ…」


 エンドレスにリピートされているかのような言葉。まるで、なにかの呪文のように繰り返されていた。サブリミナルのように自分の心の中で暗唱されていく。


「こいしくば たずねきてみよ いずみなる しのだのもりの うらみくずのは」


『恋しくば 尋ね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉』


 自然と言葉が重なった瞬間、ハッと目が覚めた。何もない白い天井を見上げる。自然と冷や汗が輪郭りんかくつたう。自分は、とてつもない夢を見た。時計の針は丁度、丑三つ時を指している。夢だと思うも気になり、脱衣所へ確認しに行く。すると、脱衣所の床には人型の式神が落ちていた。そのついでに冷や汗でれた服を脱衣所で早着替えする。そして式神を握り締めて、しのだのもり*葛葉稲くずのはいな神社に向かう。ただ一つだけ、聞きたいことがある。自分は全速力で月が照らす夜を走った。

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