第8話「やっぱ俺、“独裁者”になるわ」


とある部屋



「お主が“新世界の神”となられるお方か?」



王は圭祐に尋ねた。



「そうです」



「“新世界の神”になる男です」



「よかろう」



「わしもそう長くはない…」



王は70を超える老人だった。



任期もそうだが、寿命も長くはない。



「もし、わしに何かあった時は…」



「お主に、ここの統治を任せたい」



「わかりました」




――その後、王は死んだ。



​「何があった?w」



必然的に兄は、この小さな国の統治者となった。




「我を崇めよ!」←兄



みんな、黒マントを羽織った兄の前で跪いた。



ある程度“貧困”は解決したみたいだけど…。



「ふっ‥やっぱ俺―――」




「“独裁者”になるわ」




「おいw」



これまでの推移↓



自宅警備員(ニート)→救世主→医者→救世主→サーファー→


救世主→新世界の神→“独裁者”

          (↑今ここ)




「てか、“新世界の神”になるんじゃなかったの?!」




「そもそも“救世主”は??」



私は兄に質問した。



「一方的に質問すんなって…」



兄は面倒臭そうに言った。




「じゃあ、1つずつ‥」




「“新世界の神”は――?」




「堕ちた」



即答ww




「‥“救世主”は?」




「散った」




「じゃあ‥」



私は核心に迫る。




「――お兄ちゃんは?」




「死んだ」




兄?はすべて即答した。




「‥いつ?」




「だいぶ前に」




「だいぶ前って‥」




一体、どういうことなの?




「それを聞いて何になる―――?」



兄?は私に尋ねた。



え…


もしかして。。。




「もしかするね」




兄はニヤリと笑った。



彼には、私の心の声が聞こえていたのだ。




「‥あなたは、誰なの?」



さらに私は、核心に迫った。




「“選ばれし者”」




兄は答えた。



そして、私を見る。



「‥誰に、選ばれたの?」



私はさらに質問をした。





「この世界に」




選ばれし者は答えた。



ダメだ。


何もわからない。



「…昨日のことは、感謝してるよ」



私は彼に言った。



「ただ…」



「ただ?」




「私には、“お兄ちゃんの暴走”を止める役目があるの」



「なんのために?」



彼は即疑問を口にした。




「‥わかんない」



「?」



「わかんないけど、今のままじゃ、ホントにおかしな方向に行くんじゃないかって…」




「‥おかしいのは俺じゃない」




「“世界”だ」



彼は言った。



「世界…」



私は彼の言葉を繰り返した。



わずかに沈黙が流れる。



「‥1つ、例え話をしよう…」



彼は語り出した。



「間違ってる世界で、その間違ってることが“常識”になっていたとする」



「もし、正しいことをしている人間を“おかしな人間”であると認識した場合」



「その世界の間違った住民は、正しいことをしている人間を“間違った人間”であると非難する」



「そして、自らの“間違った行い”を“正しいことをしている”と思い込んだ“間違った住民”は」



「自らの“間違った行い”を無意識に“正当化”する」




「理論的には、これと同じことだ」



よくわからない。



「つまりだ」



「間違った常識の上に成り立った世界に生きる人間は正しい人間を拒絶し――」



「逆に正しい常識の上に成り立つ世界に生きる人間は間違った人間を拒絶する」




「本来あるべき姿(世界)は言うまでもなく―――」



「後者だろう」




彼は真剣な眼差しで、私に言った。




もう、論理学者にでもなったら?



心の中で提案してみる。



「考えるよ」



彼は言った。



「‥ってことは」



「今のこの世界は、“間違った世界”…?」



私は彼に確認した。



すると彼は、静かに頷いた。




「‥さて」



「用は済んだし」



彼は瞼を閉じながら言った。



「俺達も、そろそろ行くか」



そして、閉じていた瞼をゆっくり開き、私に言った。



さっきまで黒かった瞳が、赤に変わっていた。



「え?」



私は驚いた。



この国の統治を任されたのに、簡単に離れていいのか。



でも、この世界は間違った世界(偽りの世界)ならば…



問題ないのかな。



グィ‥



「へ?」



考え事をしていた私は、彼に左腕を引っ張られた。



​かなり密着している。



私は思わず顔が赤くなった。



鼓動が高鳴る。




「・・目を瞑っていろ」



「もうじき、“イマジン・ゲート”が開く…」



「イマジン・ゲート?」


私は彼に尋ねた。



「“空想の門”だよ」



「すべての答えを知るための…」



​なんだろう?空想の門って…



​気になる。



‥そして、知りたい。



​すべてを・・・。



「‥さぁ、俺たちの冒険は」



「これからだ…」




​こうして、私と選ばれし者は、



空想の門(イマジン・ゲート)の中に



吸い込まれていった。




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