第7話「やっぱ俺、新世界の神になるわ2」



よくわからない空間に、私と兄は連れてかれた。



両手を後ろにロープで縛られ、抵抗できない形に。



目の前には国王?のような位の高そうな人が、椅子に座って見下ろしていた。



豪華な衣装を纏って。



「‥貴様は何者だ?」



さっきの役人の1人が、鋭い刃を兄に向けた。



しかし、兄は全く怖がる様子もなく、逆に涼し顔をしていた。



​そして、兄の口が開く。




「“新世界の神”になる男です」




「‥もう一度訊く、貴様は何者だ?」




役人は真顔で再度兄に訊いた。




「“新世界の神”になる男です」




​さっきよりも大きな声で、兄は真剣な顔で役人に告げた。




また始まった…。



空港の時と同じパターンだ。



兄の隣にいた私は呆れ返った。




「ふざけるな!この女がどうなってもいいのか!?」




もう1人の役人は、私の首に刃を近づけながら言った。



​刃の尖端が首筋に当たり、微量の血が首と刃を伝って滴った。




ヤバい、殺される…。




『大丈夫。何かあったら、俺が守ってみせるから』




昨日、兄が言ってた言葉を思い出した。



だから、私は兄を…



信じる。




「‥神は言った」




はい?



また、兄は意味不な発言を始めた。





「少女の生き血が欲しいと‥‥」




「‥え?ちょっ」



に、兄さん・・言って…?




「‥殺れ」



兄の隣にいた役人は、私の隣にいた役人に言った。



私の隣にいた役人は、鋭い刃を私の首筋に横から振りかざそうとした。



いやだ‥


死にたくない‥‥



お願い、誰か‥‥




フゥン‥



刃が風を斬る…。




「いやぁあああああああああああああああっ‥」




私は迫り来る恐怖で目を瞑りながら悲鳴を上げた。




キィイイインッ!!?




突如、何かが刃にぶつかった。




「なっ?!」



役人は目を見開き、驚いた。




「‥思ってる魔物に」



「それは良くないから止めるようにって・・・」



兄は間を置いて、さっきの話の続きを語り始めた。



見ると、私の首筋から黒と赤の、禍々しい手首が伸びていた。



その場所は、先ほど役人の刃で傷ついた箇所であった。



つまりその手首は、私の鮮血によって構成されていたのだ。



​ギシシ・・・




その手は、刃を掴んだままピクリとも動かなかった。




「忠告したんだとさ‥‥」



兄はそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。



「あ、悪魔だ…」



「こいつ、ただの人間じゃねぇ!」




「だーかーらー‥」




「俺は“新世界の神”になる男だって、言ってるだろう?」








「人間のクズが・・・」






バキンッ!






兄が言い放った直後、私の首筋から生えた禍々しい手首は、掴んでいた刃を粉砕した。



数分後、手首が結晶のように消えたのを見計らい、私と兄を縛っていたロープが、その場にいた役人によって解かれた。



その後、兄は国王と密談?するため、私を残して別の部屋に入っていった。



‥兄は結果的に、私の命を救ってくれた。



でも、なんだか“兄の見てはいけない一面”を見たような気がして、複雑な気持ちになった。



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