第5話「やっぱ俺、“サーファー”になるわ」


空港を降りた私と兄は、海に近い異国の地へ降り立った。



修学旅行とは違い、今の私には“不安”でしかない。



第一、言語も文化も全く違う国に来ている。




おまけに・・・



「こんにちは。今日も暑いですね」



兄はいつの間にか、海パン姿になっていた。



サーフボードを手に、砂浜に止まっていた鳥に話しかけていた。




って、“世界救う”んじゃなかったのかw




思いっきりサーフィンする気満々なんですけど!




「ちょっと兄さん!どういうつもりよ?!」



「どうって、見ての通り―――」



「サーフィンだよ」



兄は波に乗りながら告げた。



いつの間にか私は、兄とは別のサーフボードに乗せられ、波に乗っていた。



何が何だかわからないw



「結里花、やっぱ俺・・・」



「―――“サーファー”になるわ」




「“あの話”はどうなったのぉおおおおおおおっ!?」



波に対する恐怖と戦いながら、私は兄に叫びながら訊いた。



「あの話ー?なんだっけぇー?」




兄はちゃらけた口調で私をおちょくりながら、楽しそうにサーフィンをしていた。



「“世界を救う”って話に決まってる

じゃぁああああああんっ!!!!!」



私の目の前に、大きな波が・・・




「世界ー?あー・・」



ふっ


「忘れてたわ」



兄はなぜかトーンを下げて、不敵な笑みを浮かべた。




​ダンッ!




すると、兄は私のサーフボードに飛び乗った。




次の瞬間、目の前の荒波を拳で弾き飛ばした。




バッシャアアアアアアン!!!!?



大量の水しぶきが、私にかかった。



フード付きのジャケットが透け、下着の跡が・・・。



「・・・・・・・」



私は恥ずかしさのあまり、兄と視線を合わせる事がなかった。




「危機は去った・・」



俯く私を差し置いて兄は、青空を見上げながら呟いた。



「こ、この・・」




「バカ兄貴ぃいいいいいいいいいいいっ!!!!!!?」




パンっ!!




「ぐはっ!」




ドッボーン!




(兄・圭祐は、妹・結里花の平手打ちを喰らい、深い海の底に堕ちた)



​―海の中―



「バカはどっちだ・・ブクブク・・・」




「俺・・“金槌”やぞ・・・ブクブクブクブク・・・・」





​その後、兄・圭祐を見た者はいなかった。









「って、勝手に殺すな!w」


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