第3話「やっぱ俺、“救世主”になるわ2」


翌日



兄の強い覚悟と気迫に押されたのか、両親は旅費を調達し、私と兄は異国の地へ飛び立つことになった。




​兄は“世界を救う救世主”となるため。



​私は“兄の創り出す世界”を目撃するため・・・。



とは言いつつ、私の大きな役目はズバリーーー




“兄の暴走を止めること”



これに限る。



​これまでも、兄の“特異なカリスマ性”によって、幾度となく私を含む家族は振り回された。


​良い意味でも、悪い意味でも、振り回された。



兄の一番の被害者は言うまでもなく―――



ほぼ100パーセント、私である。



―空港―



「パスポートの掲示をお願いします。」



私と兄は、受付の外国人の男性にパスポートを渡した。


​男性はおそらく、アフリカ系アメリカ人である。


日本語がペラペラだった。



「滞在期間と滞在理由を教えてください。」




「滞在期間は2週間」


兄は滞在期間を即答した。



「滞在理由は――――」



昨日みたいに変なことを言いませんように!!


私は祈った。



「“世界の救世主”になるためです」



ストレートに言っちゃったよwww


しかも真顔でw



「あ、あの・・もう一度、滞在理由をお願いします。」



困惑したように、受付の人は兄に訊き返した。


無理ない。


​私も同情します。。。



そして、兄は・・・



「“世界の救世主”になるためです」




また、意味の分からないことを言い出した。


しかも、さっきより声デカい・・・。



後ろには長蛇の列ができていた。


このままでは・・・。



「あ、えと・・友達の家に遊びに行こうと思いまして」



「実は今日、友達の誕生日なんです(ウソ)」



私はその場を凌ごうと、敢えてウソの口実をした。



もちろん、どこに行くかも知らされてないし、外国に友達などいるわけがない。



「あー、そうでしたか。」



「では、ごゆっくりお楽しみください。」



受付のお兄さんは笑顔で言ってくれた。



「ありがとうございます」



私は丁寧にお辞儀をした。



「ほら、早く行くよ!」



私は兄を引きずり、乗車口に向かった。



ある意味、一緒に来て正解だった。



まったく、このバカ兄ぃは・・・。



指定席に座った私は、そこで溜息を吐いた。


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