第2話「やっぱ俺、“救世主”になるわ」

数時間後。




仕事から帰ってきた両親に、兄は事情を話した。



「ばっきゃろー!!何の為に高校入れたと思ってんだっ!?」


父の罵声が家中に響き渡った。


当然だ。



「これからの事、ちゃんと考えてるの?」



心配そうに、母は兄に質問した。


私は兄を見つめた。


この状況で、兄は2人になんて説明するんだろう。



「‥父さん、母さん」



「ごめん…」



「何がごめんだ」



「『ごめん』で済むんなら、こんな説教する必要などあるものか!」


父は激怒した。


顔が真っ赤になっている。



「‥ちゃ、ちゃんと考え直すよ」



「今後のこと…」



兄は目を逸らしながら言った。



「ホントに、大丈夫なの?あなたはこの家の長男なのよ?今のあなたがしっかりしないと、これから大変な事になるの」



「――圭佑、あなた1人の問題じゃないのよ」



「………………」



兄は黙りこくった。


「‥何か言ったらどうなんだ?」



父は兄を厳しい眼差しで見つめていた。



『警察は、テロ組織の犯行と見て…』



居間でつけっぱなしのテレビからニュースが流れてきた。



最近、家の中だけじゃなく、世界もやばい状況になっているらしい。



それを見聞きした兄は、やがて口を開く。



「父さん、母さん・・・」



「‥やっぱ俺」




「“救世主”になるわ」





「はぁ!?」



2人は面食らった。


もちろん、その場にいた私も、驚きを隠せなかった。



いくらなんでも、“自宅警備員ニート”の次は“救世主”になるとか、話が色々とおかしすぎる。



「・・そこで、相談なんだけど」



「結里花も、一緒で良い?ちょうど春休みだしさ」



「はい?」



「おまえ、こんな状況で何考えて・・」



​父は唖然とした表情で、兄に尋ねた。




「何って、“世界救ってくる”んだよ?偉大じゃね?伝説だよ?」




​「後世に名前残るんだよ?」




「自宅警備員に比べたら、違う意味で説得力あるけど・・・」



「ちょっと、無理なんじゃ・・・」


​私は兄に言った。



「いや、結里花・・・」



「兄さんに“できないこと”なんていうのはな、1つたりとも存在しないんだよ」



​「救おうと思えば、世界だって一瞬で救えるんだよ」



なんだ、このイケメンは・・・。



「・・だから、俺について来てくれないか?」



え・・?



「大丈夫。何かあったら、俺が守ってみせるから」



全然大丈夫じゃない。



「あの時みたいになれないかもしれないけど」



「俺、頑張るから・・・」



けど、信じてみたい。



もう一度だけ。




「・・兄さん」



そして、この目で見てみたい。



「私も、連れてって・・・」




彼の創り出す世界を。





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