まぶしい太陽に輝く白い半袖体操服
玉砕し続ける僕を見て、ハクトやシドさん、メンバーは思いっきり嗤ってくれる。
彼らにとっては他人事なんだろうけど、もう三年生の夏休み。彼女と毎日会えるのも、あと半年しかない。
「女なんて、黙ってても寄ってくるだろうに」
ハクトとシドさんがそう言って首をかしげるけど、天然物の美形の二人と、平均的な日本人顔の僕とでは足をくっつけている土俵が違う。そして、森子はどちらかと言えばこの二人が立っている土俵にいる。僕は、そこまで這い上がらなければならない。その辺の努力に早く気付いて欲しいものだ。
「……まあ……今のお前の彼女だったら……俺もイヤだな」
シドさんが僕を見て、呆れたように目を細める。
「なんでイヤなんです?」
髪の毛も、染めた。黒から、校則に触れない程度の茶色に。眉も整えて、歯医者に月一で通い、口臭にも気をつけている。制服のブレザーだって、体操服のジャージだって、お母さんに頼まないで毎週末、自分で洗うようになった。
「……私服のセンスがださい」
ハクトが、僕が着ている紺色のジャージを指さし、キッパリと言い放つ。
「なんで私服が中学の時のジャージなんだ」
「失礼な。小学校の時の体操服だってまだちゃんと使ってる」
「せめてゼッケンくらいとれ。そして、その恰好で渋谷に来るな。地元でコーヒー飲んでユニクロのマネキン眺めてファッションセンスの勉強してろ」
ハクトの言葉に、シドさんがぽかんと僕のジャージを眺める。
「それ、練習着じゃなくて私服なのか?」
「そうですけど……?」
「それで渋谷に行くの?」
「原宿にも、表参道にも、お台場にもこれで行きます」
「3-1眞鍋で?」
「何か問題でも?」
「鞄はランドセルじゃないだろうな」
「両手があいて楽ですよ?」
……その日から、何故かシドさんが僕に「俺も成長しすぎて着られなくなったんだ」と、たくさんの服やアクセサリーをプレゼントしてくれるようになった。そして、この服はこのアクセサリーとあわせて……など、強要してくるようになった。気持ちはありがたいけど少々、ウザい。
シドさんからもらった先が鉄入りの革のブーツは、非常に重たかった。ヴィンテージ物だというジーンズは、身長はほぼおなじでも外来種のシドさんだからこそ似合う足の長さで、切ろうかと思ったけど、「一本十万円!」と、ハクトに止められた。もらったTシャツは黒ばっかりで、陽射しの強い夏には暑い。白く輝く半袖の体操服が恋しい。
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