第3話 うら島の話

わたしを鬼ヶ島に連れてって

1.おかしな話

 それから4年間……おかしなことに、イサとワカから、便りらしい便りは一度も無かった。

 小猿は桃姫とクニカ姫、そしてワカの母であるハエイロド姫を守り、ワカのいない朝廷は、残された第二王子と第四王子が摂政として孝霊帝を助けながら政務を取り仕切って、なんとか4年という歳月を過ごしてきた。


 だが、とうとうそれも限界が来た。今まで桃姫と小猿が煎じた薬でなんとか生命を保っていた孝霊帝が、ついに倒れた。

 死への入り口にあって、「孝元東宮」をしきりに呼んでいる。

 

「おひぃさん。俺は、イサとワカの君を探しに行こうと思う」

 ある日、小猿が桃姫に向かってそう切り出した。

「わたしも、行く!」

「あかんよ。西方に向かったとは言うても、西の国は広い。4人とも、どこにおるか、わからんのやで? それに、女の子は海神の怒りに触れて海に嵐を起こすよって、海の旅には連れて行けん」

 小猿がどんなに説得しても、桃姫は「付いていく」と言って聞かない。

「そしたら、おひぃさん。こうしよう。もしも……俺が大王が崩御するまでに帰ってくることが出来んかったら……ここから西にある村のウラシマという男を訪ねてんか」

「ウラシマ?」

「ここからもっと西の方にある村の村長むらおさで、海神の娘と話をしたことがある男や。その男に聞いたら、西の海の渡り方を教えてくれるやろう」

「わかった」


 まずは自分の帰りを待つように……と、しつこく桃姫に言い置いて、小猿は旅に出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る