第2話 ヤマトの国の話
おばあさんが川で洗濯をしていたとき
1-1.ヤマトの話
さて、ここで物語はやっと本題に入る。
ヤマトの国は、初代
ヤマトは当時の
だが、大王の御旗を背負って将軍たちを従え、戦地に赴く武人たちを束ねるはずの
東宮の名は、
孝霊帝や大臣たちが孝元東宮に少しでもムチャをさせようとすると、すぐにヒステリーを起こす。東宮は東宮なりに、身体の大きな家臣を相手に体術の修練を試みたりはしたのだが、母がそれを見とがめて、また、ヒステリーを起こす。
それが数年続いて、東宮の方も身体を鍛えることはすっかり諦め、勉強にいそしむようになっていった。
孝霊帝はそんな孝元に
自分の代で西方の国々を制圧し、孝元には日の国の西地方をすべてヤマトの国として、後世の大王が行うだろう東方制圧にむけ、国力の増大に心血を注げる御代にして引き継がせてやらなければならない。
だが、それには自分のため、いずれは大王となる孝元のため、ヤマトの国のため、ヤマトの軍を率いる総大将となるべき健康で強い王子が必要だと……孝霊帝は考えていた。
そんななかで、孝霊帝の第三王后である
この時代、双子は忌み嫌われる存在だった。それで父親に嫌われ、去年、双子の妹である
孝霊帝は、同じ王族であるクニカ姫が我が子を、しかも男の子を産んだことに、心を躍らせた。
「王子は
王子の誕生を知らせに来た
「母子ともに」
アシナヅチも、その髪の毛のない、しわくちゃの顔をさらに破顔させ、王子の誕生を喜んだ。
「そういえば、良い知らせと、悪い知らせがございます」
アシナヅチがふと、真面目な顔に戻るので、孝霊帝は首をかしげる。
「なんだ?」
「巫女の君がお産みになった王女の方は、死産いたしました」
ちょうど同じ日に、孝霊帝が気に入って傍においていた娘も出産していた。だが、その子は残念ながら死産だったという。
「そうか。で、良い知らせの方は?」
「クニカ姫様が、もう一人、お子様をお産みになられました。女の子でございます」
「なんだと? 双子だと申すか?」
「おや? 双子では、いけませんか?」
てっきり、「死産した子の生まれ変わりだ、慈しんで育てよ」という命令が下るかと思っていたアシナヅチが、眉根を寄せて大王を見つめる。
「双子は育たぬ」
「何を仰せです」
孝霊帝は天照大神を先祖に持つ神の子である。だから、しきたりや儀式を非常に大切にしている。だが、武人から立身出世した木訥な老人、アシナヅチは宗教的な概念が理解できず、「よく食べ、よく寝て、よく動けば、自然と元気な子に育ちましょう」と、当たり前のようでいて難しいことを言う。
それでも、「双子は……」と言い続ける大王に、アシナヅチはある提案をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます