第522話 大阪市中央区難波の太郎(大)
「無理矢理観に行くか」
最近、気になっているアイドルをテーマにした映画のネタバレを踏みそうになっていたのだ。ネタバレ対策は、さっさと観てしまうこと。ここしばらく仕事も趣味もやることが多過ぎてオーバーフロー気味ながら、時間は創るものだ。
一応定時退社推奨の日だという理由付けをして仕事を早めに切り上げ、映画を観るべく難波の地へと向かう。
が、その前に。
「腹が、減ったな」
仕事をこなせば腹が減る。当然のことだ。
どこで喰ったものか? 久々に、麺屋が集う場所に行ってみるか。
ということで、難波高島屋の斜向かいのエディオンへと足を向ける。この九階に麺屋が集っているのだ。
さて、どんな麺を喰おうか? と思いつつ、エレベーターを下りて少し進むと。
「なんだ、これは?」
京都の麺屋だ。京都と言えばあっさりとか間違った印象がある。確かに、脂は少ないかもしれないが、塩気はむしろ強いものが多い。そもそも漬物は塩漬けだ。
そんな京都は麺屋の激戦区でもある。バリエーションも多い。こってりも京都だ。
そんな中でここは、清湯の豚骨醤油系の店だと思っていたのだが。
「太郎?」
そんな名前のメニューがあるのだ。食券機のボタンに描かれたビジュアルは、こんもりと野菜が盛られたアレだ。トッピングの調整はないようだが、サイズが大中小と選べてトッピングの量もそれで決まるシステムのようだ。
気になったなら、いくしかない。
食券を確保して、カウンター席へと着く。
食券を出すと、サイズを尋ねられる。ここのところ不摂生気味なので、ここは中で留めるべきだ。そう、心に固く誓いながら。
「大で」
身体は正直だった。口に出した言葉は消えない。仕方ない、大にしておこう。
あとは待つばかりとなれば、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は動物喫茶ネタのイベント中だ。ここしばらく頑張り過ぎたのでスローペースだが、新しいリリーが登場しているのでそれだけは確保できればいいなぁ、ぐらいの緩いペース。
軽く出撃すれば、もう、注文がやってきた。
「なるほど、じ……もとい、太郎か」
山と盛られたもやしとキャベツの頂上にはフライドオニオン。麓にはゴツい豚と刻みニンニク。縁に覗くスープは、乳化していない清湯豚骨醤油。
「いただきます」
レンゲでスープをいただけば。
「ああ、スープはやっぱり想像通りのだ」
ときどき無性に食いたくなるタイプの京都の清湯豚骨醤油の系統だ。ゆえに、見た目の割に重くない。
野菜を喰らえばシャキッとした食感がいい感じだ。絡むオニオンフライが風味を加えてくれて野菜そのものの甘みが引き立ってそのままでもいける。だが、スープも楽しまないと。
しばし、スープに野菜を浸して嵩を減らしたところで、天地を返してニンニクと豚を沈め、麺を引っ張り出す。
太麺だが、この系統にしては細い方か? それでも、もっちりした食べ応えのある麺でよい。
ここで豚を囓れば、しっかりとした酒の摘まみに欲しい味わい。
ニンニクも全体に混ざってきて、段々と味が深まっていく。
段々と勢いづいて食が進むなか、半分ほど過ぎれば、
「調味料を使うか」
まずは、胡椒でピリリとさせる。いい感じだ。
一味が欲しいところだが、ない。代わりにこの系統に付きものの辛味噌があるので軽く入れて、唐辛子の味わいを足す。
ああ、いい感じだ。
思ったより軽い。※個人の感想です。
これなら大でも余裕がある。※個人の感想です。
あとはもう麺麺野菜野菜豚スープという感じで、どんどん喰らっていく。
馴染みのあるベースの味がこういう麺になっているのが、とても楽しい食の体験だ。
と。
「もう、終わり、か」
最後には野菜の切れ端やらが浮かぶスープだけ。清湯なので、飲み干すか?
いや、汝完飲すべからず。
ここは、グッと我慢しよう。
最後に水を一杯飲んで未練を断ち切り。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「まだ、時間はあるな」
飯を食う想定で余裕を持って出たが、早々に店を決めて喰ったので大分時間がある。
「映画前の腹ごなしに、歩くか」
オタロードへと、足を向ける。
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