第521話 大阪市浪速区日本橋のTKM(たまごかけめん)400g

「腹が、減ったな」


 月曜の仕事を終えた私は、空腹だった。


 現在、色々と仕事が立て込んでいるので、頭脳労働をあれやこれやと片づけていくと、カロリーを消費するのだ。


 ならば、ちょっとガッツリ行ってもいいか? いや、この季節、さっぱりしたものの方がいいか?


 ならば、と仕事を終えた私は難波の地に降り立っていた。南海方面へ向かい、右手、南海の線路となんばパークスの間の道を南へと進む。


 途中で左に折れて線路の反対側に出てしばし、昔ながらの中華食堂のある交差点で左へと。


 そのまま真っ直ぐ進めば、目的の店がある。


「お、すぐ入れそうだな」


 微妙な時間だからか店内は空いている。


 さっと入り、入り口脇の食券機で、TKM(たまごかけめん)の食券を確保する。ずっと気になっていたので、この機会に、ということだ。


「お好きな席へどうぞ」


 とうことだったので、給水器横のカウンター席へ着いて食券を出す。


「麺の量は400gまで選べますが」


「400gで」


 迷わず、答える。お腹が空いているのだ。


 特にマシなどはないので、これで注文は完了だ。


 が。


「追い飯もありますんで、また必要な時に声をかけてください」


 と。ん? なら、400g は多かったか? と思わないでもないが、いいだろう。今なら、きっと、いける。


 セルフの水を確保して一息入れたところで、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。今日から、新しいイベントだ。どうやら、カトレアメインのようだが、新しいリリーがこなければ今回は色々自粛しよう。


 とりあえず、おでかけを仕込んでイベントのルールを確認から。軽く出撃したところで、厨房で麺を上げる気配があったので、終了。


 しばし待てば、注文の品がやってくる。


「なるほど、TKM、か」


 丼一杯の麺の上に、卵黄が二つ。縁には大きな海苔が2枚添えられているが、それだけ。付け合わせに、刻みネギ、黒バラ海苔、おろし生姜が載った皿。


 ちょっと薬味を足して喰うTKGと同等のシンプルさ。


「いただきます」


 タレは底に沈んでいるということだったので、まずは、しっかり混ぜる。


 ちょっととろっとしたタレと、赤みの強いオレンジの卵黄がドロドロと麺に絡んでいく。


 全体がほんのりオレンジに染まったところで、麺を啜る。


「おお、麺の味が、際立つ」


 タレはなんだろう? 和風というか、本当にご飯に合わせるような感じの味わい。それで、麺を喰らうのだ。シンプルにバキバキの太麺を頬張る楽しさが味わえる。


 顎が疲れるぐらい固い麺を喰らう喜びをしばし堪能したところで、


「薬味も入れるか」


 細かいことは考えず、どばっと、ネギ海苔生姜を放り込む。


「どれもいい仕事するなぁ」


 シンプルだった味わいに、ネギの辛味、海苔の風味、生姜の刺激が加わって、ただただ麺を頬張るのが楽しい。


 400gの麺は多いが、これなら全然いけるな。


 半分ほど食べたところで、海苔を一枚使って麺を包んで喰らう。TKGではよくやる食い方を、麺で試すが、


「合わない訳がないなぁ」


 とても幸せな味わいだった。そのまま勢いづいて喰らう、前に。


「まだ、足せるものがあるな」


 セルフコーナーから刻みニンニクを確保。放り込めば。


「おお、この臭み。旨み」


 想像通りの味わいになって、更に麺を喰らう箸が加速する。


 だが、もう一声。


 今度はセルフコーナーから一味を追加。


 この味に唐辛子の風味がマッチしないわけがない。


 とにかく、麺を頬張る幸せを堪能し、底にたまった卵とタレが見えてきたところで、


「追い飯、お願いします」


 これで終わるなんて、勿体ない。


「一杯と半分選べますが」


 ときたので、


「半分で」


 飯は喰いたいが、限度はあるからな。


 やってきた米を即座に放り込み、混ぜる。


「ああ、TKG」


 普段、卵は控えているので本当に久々のTKG。諸々のタレや薬味で豪華な味わいが嬉しい。


 ここで、残しておいた海苔で巻いて喰うのも忘れない。これが、したかったんや。


 そのまま、最後まで勢いで喰らい付くし。


 しばし、幸腹の余韻に浸り。


 最後に水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に上げて店を後にする。


「さて、少し腹ごなしに歩いて帰るか」


 オタロードへと、足を向ける。

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