第484話 大阪市天王寺区上本町の冷や喜多
「懐かしいな」
仕事の後。以前受けた検査時に受けた生検結果を聞きに上本町の病院を訪れていた。聞いた結果は、『良性』ということで、特に問題なく帰宅の途に着いた。
上町台地を登り、上本町駅を目指す。
ここは、高校時代の通学路でもある。もう、見る影もないが、それでも商業施設は当時からある。
上本町駅に直結する近鉄百貨店を越え、地下鉄の駅に繋がる商業施設ハイハイタウンへと。
高校時代はゲーセンが幾つもあり、スト2やらぷよぷよやらを遊んでいた記憶がある。あと、ぷよぷよの隣にあった超現実的な麻雀でコインを入れて地和なりを喰らって帰っていくサラリーマンも目撃したことがある。
そんな懐かしい地。実のところ地下からはよく入っているのだが、こうして地上から入るのは本当に久しぶりなのである。
すっかり店が入れ替わったかと思えば、ミスタードーナツだけは当時からそのままあったりする。
そんな風に懐かしみながら中へと足を踏み入れる。
とりあえずトイレに向かったところ。
「今は、こういう店になっているのか」
かつて○ゲ屋があった場所。その後、いくつか店が代わり万年生きるあれ由来の麺屋になっていたのを最後に確認していなかったが、今は違う麺屋になっているようだ。
せっかくだ。ここで晩飯を済ませていくか。
店頭を観れば、喜多方ラーメンというやつらしいが。
「いや、これはどうなんだ?」
期間限定で『冷や喜多』というメニューが掲示されていたのだが、どこにも喜多方要素が見当たらない。これは、俄然気になってきたぞ。
ということで、店内に入り件の麺の食券を買い、案内されたカウンター席へ。
おもむろに限定麺のメニューを提示されたので、
「麺は300g、野菜はマシ、揚げニンニクマシマシ、ガリマヨ有りで」
とコールを済ませる。いや、喜多方でコールなんてないはずなんだが、メニューにそう書いてるんだから仕方ない。何か、食券には店頭メニューには無かった二郎という文字も入っていた気がするが、それはそれとして。
あとは待つばかりとなれば『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は『エスプガルーダ2』のコラボイベント中だ。あの、製作者に愛されすぎて、特定条件を満たすとなぜか最終面手前でラスボスより強い隠しボスが登場してしまうアレだ。当然のように、そのキャラも登場している。
とはいえ、今回はのんびりペースだ。これから、夏が来る。そこに備えて調整しておかないと、昨年のようにクレジット請求額で大変な目に合う。私は学習するのだ。
おでかけを仕込み、イベントステージに出撃したところで、厨房で盛り付けの様子が見えたので終了。
ほどなくして、注文の品がやって来る。
「うん、喜多方要素ゼロだ、これ」
丼にこんもり盛られた野菜は、水菜大根の細切りもやし。その下に豚は白いバラとチャーシューのブロック上のものが見える。野菜にはガリマヨが掛かっている。
「いただきます」
これはまぜそばの類なので、まずは混ぜる。
麺を引っ張り出せば、黒目のしっかりしまった太麺。しばし混ぜて喰らえば。
「ああ、冷やし中華マヨ和えだな」
基本はそういう感じだ。ガチガチの食べ応えのある麺が、東の方にしかないアレを思い出させてくれるが、全体に味付けはサッパリ目。バラはタレを被っておらず、チャーシューもそこまで濃い味付けではない。
マシマシた揚げニンニクの食感がいいアクセントになりつつ、マヨとタレの酸味でバキバキの麺を喰らっていく。
そういえば、ここしばらく体調を崩して腹一杯喰っていなかったのだ。
この機会にガッツリ喰っておくのは大事なことなのだ。
グチャグチャにまぜて喰らっているので、全てが渾然一体となった味わいだが、これはこれでよいものだ。
重すぎないのが丁度いい。
見た目の割にはスルスルと喰える。
熱い夏にいいメニューだろう。
正直、もう少しガツンときてもよかったが、このあっさりが喜多方要素なのだろうか? というのは穿ちすぎか。
そんな風に気楽に楽しみながら食を進めていると、スルッと全てが胃の腑に落ちていた。
最後に水を一杯呑んで一息入れ。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「さて、帰るか」
駅へ向かうべく、地下へ降りる。
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