第447話 大阪府茨木市新庄町のカレー南蛮200g全マシ

「いかねばなるまい」


 茨木のTRPGが出来る素敵な場所で魔法使いになって災厄を防ぐシステムのGMをした帰り。


 心地良い疲れに腹の虫も元気になっている。つまり、腹が減っている。


 奇しくも昨日から限定が始まったという店が近くにある。


 セッションを終えて東西通りを阪急の駅の方面へと歩いていた。


「冷えるな」


 冬の装いにしていたつもりだがそれでも身を切るような寒さ。だが、大丈夫。暖かい夕食を食いにいくのだから。


「結構並んでるな」


 店に着くと、前には十人弱の列が出来ていた。限定がなければ諦めてしまうところだが、そうはいかない。


 店内で限定の食券を確保して、外に並ぶ。


 ここまで歩いて程よく身体がというか吸湿発熱素材の服が温まっている。まぁ、大丈夫だろう。


 列に並び、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。今日は五悪魔のクリスマスイベント最終日。リリーで50位以内に入るべく、出撃を繰り返さねばならぬのだ。


 二回ほど出撃したところで、店内が空いて案内が始まった。だが、まだまだ先だろう、と思っていたのだが。


「ん?」


 どうやら、前に並んでいるのがグループ客ばかりだったようで、揃って入るために後に回され。


「お一人様ですか? どうぞ」


 と、早々に店内に案内された。ありがたい。


 温かい店内の待ち合い席に入って人心地着きつつ、出撃を重ね。


 カウンター席に案内されて食券を出し、水とおしぼりとお箸とレンゲを確保して出撃を重ね。


 あっという間に麺上げの気配。


 ゴ魔乙を終了して待つことしばし。


「ニンニク入れますか?」


「ニンニクあり。全マシで」


 とサクッとコールを済ませれば、注文の品がやってくる。


 こんもり盛られた野菜とよりそうゴツい豚とニンニクと一味。基本の見た目は基本通りだが、スープは茶色。


「これがカレー南蛮」


 そう、限定はカレー南蛮である。


「いただきます」


 まずはスープをいただく。


「おお、豚カレー」


 こってりした豚の出汁に安心感のあるカレー風味。カレーが粉のまま掛かっているのもあってちょっとスパイシー。一口で旨い。カレー味は偉大である。この味なら野菜が無限に食えそうなのでマシマシでも良かった気がしてくるレベルだ。いや、そこは自制すべき、か。


 細かいことは考えず、全体をまぜ合わせるべく天地を返せば。


「ネギ……ああ、鴨南蛮ならぬ、豚南蛮、ということか」


 野菜の中にネギが紛れているのだ。鴨葱なら豚葱。喰らってみれば、普段あまりこの系統で味わわない新鮮な味わい。方向性としてはカレーうどん的な出汁ガッツリカレーに、葱が抜群に合うな。


 食べる手が止まらない。太麺に絡みつくカレー味。野菜はモリモリ食えるし、ゴツい豚は脂身の旨みが絶品。更に、マシた別皿アブラを加えれば更に旨みアップ。


 カレーの風味はすべてを調和させる。この濃さをものともせず、食欲を爆増させてくれる。


 列を見て諦めず並んでよかった。


 旨い麺の寿命は短い。


 気がつけば、もう、スープが残るばかり。

 

 汝完飲するべからず。


 特に、このまま勢いで命のスープを飲み干しては己の罪を告白してしまいそうだ。最近嵌まっている作品で気に入っているキャラが裸眼であるだなんて、重大な罪を。


 かくして、食事は終わり。


 水を一杯飲んで区切りをつけ。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に、おしぼりを入り口の籠に放り込んで店を後にする。


「さて、帰ろう」


 腹ごなしに歩くべく、阪急に背を向け、JRへと。

 

 

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