第431話 大阪市都島区都島本通のラーメン200g野菜マシマシニンニクマシ背脂普通

「復活、か」


 店主の不調により、何度か趣くも臨時休業中だった店が、ようやく復活した。めでたい。


 ならば。


「ああ、仕度中。確かな仕込みの匂い……復活したんだなぁ」


 と、休日の朝、都島の地を訪れていた。


 開店約30分前。まだ、列もない。これなら、開店してすぐに入れるだろう。


 少し周囲を散歩して戻れば、二人組がちょうど並んだところだった。いい頃合いだろう。列の後ろに付いて待つことにする。


 徐に『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!』を起動する。現在は、夏イベントの勝者のご褒美イベント。残念ながらロザリーもリリーも入れなかったが、学園乙女はルベリスとアンゼリカが入っているので、前半は少し頑張った。


 が、力尽きたので現在の後半戦はのんびりペース。ゆったりと出撃して時を過ごし。


 開店時間がやってきた。


 久しぶりの店内に入り、順番が来たら食券を購入。このご時世で値上がりしているが、むしろ、無理して価格据え置きで営業して破綻される方が困る。遠慮なく、適切な料金を徴収する姿勢には安心感さえ覚える。


 つけ麺やまぜそばも惹かれるが、ここはノーマルのラーメンだろう。何、来月からは通常営業なのだ。また、くればいい。


 厨房をL時に囲むカウンター席に案内され、荷物を置いてから、入り口付近のコップを確保して水を飲んで一息。涼しくなったと思ったけれど、未だ残暑は厳しいざんす。


 ほどなくやってきた店員に食券を出せば、


「麺の量は?」


「200gで」


「ニンニク入れますか?」


「ニンニクはマシで。あと、野菜マシマシ背脂普通で」


 と注文を通す。


 開店待ちで周回はしたので、ここでは現在好評上映中のトンチキアメリカンジャパン(米原除く)を舞台とした『ブレット・トレイン』の原作『マリアビートル』の続きを読む。作者は原作に忠実な映像化は無意味と不許可にしていたものの、ハリウッドならいい感じにアレンジされるという想定で許可したら、換骨奪胎しつつ絶妙に原作要素を持った傑作が生まれた作品だ。まだ三分の一ほどだが、確かに、絶妙に原作のテイストが入っているのがとても楽しい。いや、そこを拾ったの?


 そんな風に読書を楽しんでいれば、時の流れは速い。


 麺上げの気配が見えたので、本をしまってほどなく。


 注文の品がやってきた。


「ああ、これだ」


 こんもりと盛られた野菜の山の頂上には脂。麓には豚の肉塊が三つほど並びその横にはたっぷりの刻みニンニク。


「いただきます」


 まずは、野菜をスープに浸して。


「この味……」


 豚の旨みと醤油のガツンと尖った味わいがいい塩梅に絡み合った味。


 今や居酒屋になってしまったオタロードの手前の店で、長年楽しんでいた味。失われたと思った味は、確かに、ここに残っている。そもそも、店員のTシャツがその店のTシャツだしな。


 トッピングに魚粉はないのだが、魚粉は席にある。それを野菜にぶっかけて喰らえば、安心の味わいになる。


 勢いよく野菜を喰らい、導線が出来たところで麺を引っ張り出し、喰らう。


 バキバキで食べ応えのある麺と、スープの味わい。やはり、旨い。この手の麺の中で、最も好みの味わいが、ここにある。


 幸せを噛み締めながら、野菜と豚を沈め、ニンニクを全体に散らし、麺を引っ張り出す。


 ここまで来れば、もう勢いだ。


 かのおそるべき龍の末裔の牙爪爪尾のごとく、麺野菜野菜野菜豚と喰らう。甘露!


 また、この味が楽しめるのだ。


 ああ、旨い。


 半分ほどが過ぎたところで、胡椒と一味をたっぷりぶっかける。


 二つの刺激が、味を引き立てて旨さに更なるブーストが掛かる。


 腹の虫が歓喜に震えているのが解る。


 丼の中身が勢いよく減っていき。


「終わり、か」


 これなら300gでもいけたかもしれないが、何、リスクを冒す必要などない。


 しばし、スープを追い駆けて名残を楽しみ。


 最後に水を一杯飲んで区切りを付け。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に戻して店を後にする。


「さて、帰るか」


 台風一過の好天の元、駅へと足を向ける。


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