第432話 大阪府茨木市新庄町の汁なし200g全マシ

「カロリーを、使ったな……」


 茨木のTRPGが遊べる素敵なスペースで『ストリテラ』なるシステムを楽しんできた。ダイスを振らず、ロールプレイに振り切ったシステムであるが、想像以上に頭を使う。


 その結果、腹が減るのは当然のことがあろう。


 かくして、東西通り沿いの青い看板の店に私はやってきていた。


「お、店内も並びが一人?」


 タイミングがよかったのか、信号を挟んで見える店外に列はなく、店内の列に一人しかいない。


 信号を待っている間に二人ほど客が入ったが、許容範囲。これならすぐいけるだろう。


 信号が青に変わったところで、店へと。


「今日は、汁なしだな」


 そういう気分だったのである。とはいえ、麺は200gでいい。青い洗濯挟みだ。


 待ちは四人目。店内用の待ち合い席に座ってほどなく、続々と席が空いていく。ちょうど入れ替わりのタイミングだったらしい。


 そのまま席に付いてセルフの水と箸とレンゲとおしぼりを確保して一息。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、ご褒美イベント中。のんびり進行にしたので、軽く出撃して時を過ごせば、コールの時がやってくる。


「ニンニクありで。全マシで」


 手短にコールを済ませれば、まずは別皿のマシた分のアブラ。少し遅れて麺がやってくる。


 こんもりと盛られた野菜には一味と黒胡椒。豚が周りに並び、一角はドンとニンニク。


「疲れた時は、これだなぁ」


 まずは野菜を減らすべく、タレに少し浸して喰らえばラーメンのモノよりもビシッと辛い味わいが広がる。しばし野菜を減らしたところで、レンゲでおせえながら全体を混ぜ込んでいく。これは、そういう食い物だ。


 ぐちゃっとした感じになり、野菜の水分もあるのかそれなりの汁気はある。そこから引っ張り出した麺を喰らえば。


「うんうん、カロリー補給カロリー補給」


 野菜の水分でも薄まることなくガツンとした味わいのタレを纏った麺は、口内を喜ばせてくれる。野菜と麺を渾然一体にして喰らえば、一味と胡椒とニンニクの刺激が混ざりあって尚善し。


 塊の豚自体はそこまで味が濃くないのもいいバランスだ。豚の旨みにタレをプラスワン。ねぇどうしてどうして教えて?


 口を通し、腹に落ちていく旨さ。


 ああ、回復していく。ゲームによくあるヒットポイント回復の『ポーション』とは、こういう感じなのかもしれないな。間違えて、ポーション・オブ・エナジードレインでないことは祈りつつ。


 勢いに乗せて喰らえば。


「もう、終わりか」


 元々、200gの小サイズ。まぜそばでは少なめの部類である。


 それでも、腹の虫は幸福を覚えている。


 ならば。


 最後に水を一杯飲んで一息入れ。


 食器を付け台に戻し、


「ごちそうさん」


 おしぼりを入り口の籠に放り込んで店を後にする。


「さて、帰るか」


 心身を満たし、帰路へと。

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