第412話 大阪市浪速区日本橋の豚骨味噌(野菜マシマシニンニクマシマシ背脂マシカラメ)
「なんということだ……」
仕事を終え、どうしても喰いたくなった麺を喰らいに都島まで足を運んだのだが。
店長体調不良のためお休み。
そう、臨時休業だったのだ。
落胆していても、空腹は満たされない。
ならば。
「よし、行こう」
駅へと引き返ししばし電車を乗り継ぎ、降り立ったのは日本橋の地である。
駅を出て南へ。堺筋から一つ西の筋に入れば。
「ここが、やっていれば……」
オタロードへ入る手前。看板はそのままにシャッターが閉じられた店舗があった。
この店の味を喰らうべく都島へ向かったのだが、もう、どうしようもない。
そのままオタロードへ入り、南下。
アニメイトビルの手前で左に折れれば、目的の店がある。
「よし、なんとか入れそうだな」
店頭の食券機にたち。
「ここは、味噌にするか」
味噌の食券を確保して店内へ入り、食券を出す。
「野菜マシマシニンニクマシマシ背脂マシ、カラメで」
サクッと詠唱を済ませれば、後は待つばかりだ。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。今日からは、ゴシックパーティー。学園乙女のターンでルベリスがクローズアップされる、か。
とりあえず溜まっていた石でガチャを回すも、持っていないが今回のではないルベリスが出た。これはこれでよし。後は、おでかけを仕込んで……
とのんびりしていれば、出撃する暇も無く注文の品がやってきた。ゴ魔乙を終了して受け取る。
「大人しめだが、これぐらいがちょうどいいか」
丼にほどほどに山と盛られた野菜。重畳には脂の雪が積もり、麓にはニンニクの雪と山肌には豚の岩盤が寄り添う。薄茶色のスープが周囲に滲んでいる。
「いただきます」
まずは、野菜をスープに浸して喰らう。
「しっかりした味だ」
カラメにしたのもあるが、味噌の塩分もいい感じ。醤油とはまた違った辛さが、気温が上がり汗で塩分を消耗している身体に染みる。
野菜には、備え付けの昆布塩もまた合う。更に塩分だ。
いいのだ。塩分を消費しているから、いいのだ。
全体的に濃い目の味を、楽しむ。野菜はモリモリ進み、麺を引っ張り出す。この手の麺にしては細見だが、しっかりとした麦の味わい。段々と混ざってきたニンニクもじんわり効いてきている。
この味はこの味で、また、いいのだ。
目当ての店にいけずとも、こうして同系統でありながら違った旨さに辿り着けるのもまた、よき。
脂に塗れた野菜と麺を喰らい喰らい。豚に齧り付けばむしろあっさりだが、そこに胡椒と一味を振り掛けてガンガン刺激をプラス。スープに浸して出汁を纏わせれば、色んな旨みが渾然一体となった肉になる。
ああ、満たされる。
腹も、心も。
マシマシを喰らうとき、人は心身共に満たされるのである。
「もう、終わり、か」
マシマシマシができてから、マシマシの量がほどほどになったのもあるが、それでも、勢いがあった。
気がつけば、固形物は喰らい付くし、残滓が沈むのみ。
レンゲでしばし追い駆け。
頃合いを見て水を一杯。
いや、しょっからかったのでもう一杯。
口内を整えて。
食器を付け台に上げ。
台の上を拭き。
「ごちそうさん」
店を後にした。
「さて、少し歩くか」
オタロードへと、身を沈める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます