第411話 大阪市中央区千日前の野菜ラーメン+しっとり肩ロース河童丼セット(キムチ+ほくほく揚げにんにくサービス)

「映画の前に、食っていくか」


 13日の金曜日。ホッケーマスクの怪人が登場する映画はもう過去のもの。


 光の巨人が登場する映画を観るために、難波の地を訪れていた。


 あいにくの雨だが、地下街を通れば雨には合わずに劇場までたどり着ける。


「きみ~にも~みえ~る~」


 懐かしい主題歌が口を着く中、地下街の途中で地上に上がり。


 思い立った店へと行くことにした。


 階段を出てすぐ、少し奥まったところに目的の店はあった。


 若干雨に濡れるが、傘を開くのも面倒だ。


 さっと速足で店の前へと。


「にんにくラーメンチャーシュー抜き……」


 なぜかそんなメニューが頭をよぎるが、そういうのはない。


 カウンター席が縦横に伸びる店内に入り、食券機へと。


「健康的に行こうかねぇ」


 野菜ラーメンだ。


 だが、今は空腹。


「チャーハン……もいいが、ここは丼のセットも頼むか」


 しっとりした丼を選び、空いていたカウンター席へと。


 食券を出し、


「味は濃い目で、麺は固めで」


 と注文を通す。スープ自体別のものにもできるようだが、ノーマル濃い目でいいだろう。


 と。


「揚げニンニクも」


 忘れず追加する。付け合わせとして、無料で注文できるのだ。


 あとは待つばかりとなれば『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』の時間だ。現在は東国編ロザリーのターン後半戦。ぼちぼちのペースで楽しんでいるが、すぐに揚げニンニクがやってきてしまった。


 固めにした麺もほどなくやってくるだろう。


 出撃する余裕なく終了し、にんにくをつまむ。


「ああ、これだけで呑めるなぁ」


 映画の前に飲むとトイレに行きたくなるので自重するが、ほくほくで旨い。


 あとは、キムチも席に用意されている。合わせてつまんでいると、注文の品がやってきた。


「シャキッとしてるなぁ」


 薄茶色のスープの上に、青々としたキャベツ、もやし、細切りの人参、白髪ねぎが乗っている。しゃきしゃきの野菜炒め、といった風情だ。


 どんぶりの方は、ローストポークが敷き詰められ、中央に卵黄、さらに、カイワレが散らされて彩もいい。


 改めて。


「いただきます」


 何をおいても、麺を啜る。パツパツの細麺はこってり目のスープをいい感じにまとい、それでいて噛めば広がる麦の香り。


 それを追いかけるように喰らう、ニンニクとキムチ。


 ガッツリいったところで、しゃきしゃきキャベツで箸休め。


 いい塩梅だ。


 一息入れて、次は丼だ。


「柔らかいな」


 肩ロースは食感も味も柔らか。ソースもやはりローストビーフ的な感じでローストポークといった趣。


 カイワレの硬さもいいアクセント。卵黄を混ぜると、背徳的な濃厚さがプラス。


 双方の良さを味わえば、後は欲望の赴くまま、だ。


 麺を野菜を豚を米を揚げニンニクを白菜を喰らう。


 勢いよくズルズルバクバクと。


 それでいいのだ。


 麺が半分以下になったところで、


「替え玉、硬めで」


 と追加も忘れない。麺と一緒に替え玉一回無料券が付いてくるシステムなのだ。これは、いかねばなるまいて。


 揚げニンニクが尽きたところで、替え玉の麺が届く。


 ここで、揚げニンニクを追加する手もあるが。


「いや、これだろう」


 席に置かれた缶と大仰な機器を手にする。


 缶の中には向きニンニク。それを機器の穴の開いた籠上部分に置き、蓋になった部分で押し込めば。


「生つぶしニンニク、プラスだ」


 生は揚げに比べてずっと香りが強い。それをスープに足し、麺を加える。


「おお、さらなる深み……」


 期せずしてニンニクラーメンチャーシューなしだが、豚丼を食っているので微妙である。


 それはそれとして、残りの麺も。


 丼も。


 しっかりと喰らう。


 最後に残ったスープ。


 ニンニク香り立つスープ。


 もちろん、行くしかない。


 レンゲで追いかけ、最後は丼を持ち上げ。


「ふぅ」


 最後の最後まで堪能し。


 水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にした。


「さて、劇場へ向かうか」


 地下街への階段を降り、劇場へと。

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