第398話 大阪市中央区難波千日前の期間限定+辛味肉
「ネタバレを避けるには、観るに限る」
前からトレーラーが気になっていた『大怪獣のあとしまつ』が妙に話題になっていてネタバレ回避でスルーする能力を試される日々。なら、観に行けばいいのだ。
そういう訳で、仕事の後、19時過ぎの予約をしたのだが。
「これだと、途中で何か喰って行くのがいいか」
というわけで、日本橋の地に降り立っていた。
オタロードに続く堺筋から一つ西の道を南下していくが、
「とはいえ、あの店は未だ閉まってるんだよなぁ」
閉店と明確になっていない。店内の券売機は灯が入ったままで電気は通っている。いつか復活すると願いながら、もう半年以上が過ぎている。
「そういや、また限定が復活してたっけ」
ということで、そこから右に折れてしばし。道具屋筋の一つ東の筋にぶつかるところに目的の店はあった。
「お、ちょうどいいタイミングか」
月曜だけ中休みがあるが、中休み明け直後。先客は二名。ということで迷わず店内へ。
入って左手の食券機の前に立ち。
「限定と……新トッピングもいってみるか」
今回の限定と共に新メニューの辛味肉なるものがあったので追加で食券を買う。
コの字のカウンターの角席に案内され、食券を出す。
「ニンニクは」
「入れてください」
とニンニクの有無を伝えれば後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動するが。
「あ、APがない」
道中で既に使い切った後だった。なので、週刊少年ジャンプを開く。月曜はジャンプの日なのだ。
しばし読み耽ったところで、注文の品がやってきた。
「赤い、そして肉々しい」
こんもり盛られた野菜の表面を覆うように、一口サイズに切られた豚が全体を覆うように乗っている。元の肉と、ネギを纏っているのが追加した辛味肉だ。その上に鎮座する辛味味噌の塊と、上からかかった一味の赤さがいい。
「いただきます」
早速、辛味肉を一つつまんで喰えば。
「酒が欲しくなる味だなぁ」
ニンニクとネギと酢味噌と旨み油らしいが、もう、完全に酒のアテだ。だが、これをスープに浸して贅沢に調味料的にいただくのもまたよいだろう。
麺を引っ張り出して啜れば、ゴマの風味。基本は担々麺なのだ。
「さて、まぜるか」
やはり、辛味味噌が混ざらねば本気を出してくれたことにならないだろう。
適度に野菜や肉を喰らいつつ、麺を引っ張り出して肉と野菜を沈めれば、褐色だったスープがすっかり赤くなる。
ニンニクもガッツリ混ざって辛味とパンチが加わって強力な味わいである。
喰っていると、段々と額が汗ばんでくるのもまたよし。
豚を野菜を、麺を、モリモリ喰らってしまえる味だ。
あるていど喰ったところで。
「少し変化を付けるか」
魚粉を少々加えてみる。
「うんうん、魚介担々麺というのもアリだな」
というか、そういう店が近くにあった気がするが深くは考えまい。
とはいえ、全体が魚介になるのは避けて量は加減したので、途中で元の味わいへと。
ごまダレとベースの豚の旨みと辛味。肉も沢山。なんというか、喰らう快感がある。
そこそこ辛く、この季節にしっかり発汗しているのもまたいい。
辛味は痛み。人魚の肉を喰らって不死になると痛覚もなくなってしまうというのは辛味を味わえないということだ。そんな不死はいらぬ。などとどうでもいいことも考えてしまう。
最後には、
「酸味をプラスしよう」
酢を回し入れて、ラストスパート。
残った豚を、麺を、野菜を、サッパリした味わいで喰らう。
酢は偉大だ。重たさを全て払いのけてサッパリさせてしまうのだ。
そのまま、固形物は全て処理し。
赤褐色のスープが残るだけ。
「さすがに、これは完飲すべきではなかろうて」
ということで、最後に水を一杯飲んで一息入れ。
「ごちそうさん」
食器を付け台に上げて店を後にする。
「さて、劇場へ向かうか」
とても楽しみだ。
その楽しみが裏切られることはなく最後まで楽しんで終われる未来は、件の肉を喰らっていないこの身ではこの時点で確定させることはできなかった。
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