第395話 神戸市中央区北長狭通のラーメン並・徳島・ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラ

「本番前にマシマシを喰うぞ」


 中々に厳しい状況になりつつも、開催される兵庫県ミニ合唱祭。会場は神戸文化ホール。


 久々の、神戸だ。


 となると、未だ沈黙する某店が、三宮には存在するのである。


 腹具合もいい感じだ。


 ならば。


「これは、行くしかあるまい」


 ということで、JR三宮駅から山側に出て、サンキタ通り商店街を少し西へ進んだところで北へ入ると、目的の店はあった。


「これぐらいの並びなら、間に合うな」


 集合まで、まだ二時間弱ある。余裕だ。


 列に入り、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、雪まつりイベント。リリーの活躍出来そうなイベントだ。福袋は確保済みだが、聖霊石は残っていない。宵越しの聖霊石は持たない主義、という訳ではなく、イベントボーナス目当てで回したからだ。


 ほどほどにボーナスもあり、こたつで寛ぐヴォルクレスが中々趣があるのなどと感じつつ、スコアタに参加したりイベントステージを回したりしていれば、時間の経過は早い。


 席が空いて、店内へと。


 狭い店舗の内側が厨房、手前側にL字にカウンターがあるだけの店だ。Lの角にある食券機で、しばし思案する。


 大阪の店にないメニューがいくつか。だが、ここはラーメンだ。


 食券を出し。


「麺並み、徳島で」


 と告げる。ここは醤油と塩だけでなく、徳島~すき焼き風の甘辛味があるのである。せっかくだからそれにしようということだ。


 そのまま、


「ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラ」


 と詠唱を済ませれば、後はまつばかり。


 ゴ魔乙の続きをしていれば、キングクリムゾンの攻撃のごとく時が飛ばされる。


「いい感じだな」


 丼の上をこんもりと覆う野菜。頂点に刻みニンニク。野菜の山肌に沿うように、角煮をスライスしたような角切りチャーシューが並ぶ。


「いただきます」


 まず、なんといってもスープだ。乳化したスープを混ぜて底からタレを引き上げる。啜れば、


「甘辛いなぁ」


 そうそう、こういう味だ。すき焼き風。問答無用で食が進む味とも言える。


 麺を啜れば、進む。


 野菜も進む。


 豚は、それ自体が甘辛い。


 ニンニクを混ぜ込んでも、甘味は失われず。


 少々くどいが、ぶっとい麺と大量の野菜と角切りの豚は十分にそれを受け止めている。


 いいぞ。


 本番に向けて、エネルギーが充填されていく。


 ああ、マシマシは本当に心と身体にいい。完全健康食だ。


 旨い。


 ちょっと甘いが、旨い。


 一味を入れて、唐辛子味を足してみる。


 甘くて、唐辛子味。


 これもまた、よき。


 存分に甘辛を楽しみ。


「もう、終わり、か」


 麺も野菜も豚も食い尽くし、残ったスープを追い駆ける。ときおり、刻んだニンニクの塊をガリッといって甘い中に刺激が加わるのを楽しむ。


 流石に、完飲は危険だ。汝、完飲すべからず、だ。


 最後に水を一杯飲んでリフレッシュし。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、ホールへ向かう、前に」


 道中で、ブレスケアを呑み、ガムを噛む。


 これなら、歌う前にマシマシ喰っても大丈夫だ。


 備えあれば、嬉しいな。


 ということで。


「ホールは、こっちだよな?」


 何度も通った道が通行止めだったので迂回したら全然知らない場所に出てしまったが、大丈夫だろう。

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