第393話 大阪府東大阪市足代新町のとり白湯めん

「MPが、回復していない、か?」


 年末年始を駆け抜けてきて、一月も後半に入った昨今。


 睡眠はしっかり取ってHPは回復しているはずが、中々本調子にならない。


 これはきっと、MPが回復していないからに違いない。心身は共に健康に保たねばならないのだ。


 ならば、気分転換にノーブルなチキンの店へとやってきた。


「うんうん、MP回復にはこれだな」


 ジョッキに入った泡立つ麦ジュースをグイッと飲み、キャベツとホルモンねぎ盛ポン酢をつまむ。


 続いてやってきたむね貴族焼きのスパイスの刺激に触れ、カラッと上がった唐揚げをそのまま、更に残ったポン酢に付けたりして楽しみ。


 MPは大分回復してきたのを感じる。


 だが、最後の〆があるだろう。


 飲物も食べ物もちょうど尽きたところに、タイミングよく店員がやってくる。


「知多ハイボールととり白湯めんを」


 サクッと注文を済ませる。


 ほどなくやってきた知多ハイボールは、グラス入りと少なめであるが、華やかな香りがしっかり楽しめてよき。


 続いてやってきたとり白湯めんは。


「なるほど、こういうのか」


 オーソドックスな細縮れ麺に、鶏チャーシュー、刻みネギ。スープは濁りのある白湯。


「いただきます」


 改めて口にして、早速麺を啜る。


「うんうん、こういうのでいい……いや、こういうのがいいんだ」


 しっかりと濃厚な鶏ガラスープの味わいを掬いあげる麺はプリッとした食感。庶民的な味わい、か。


 熱い麺にポカポカと温まってくる。


 そこに、ハイボールを流し込めばすっきりとしていい塩梅だ。


「お、鶏ハム、といった感じだな」


 塩気のある鶏チャーシューは、単品でも摘まみになりそうな味わいだ。


 ずるずると啜り、ハイボールを呑む。


 のんびりと、ゆったりとした時間。


 誰にも邪魔されず、自由で、なんというか、救われた気分だ。一人で、静かに、豊かな時間を楽しむ。


 MPも回復するというものだ。


「もう、終わりか」


 サラッと食い、呑み終わってしまった。


 だが、それでいいのだ。


「ごちそうさん」


 会計を済ませて、店を後にする。


「む、こ、これ、は……」


 目の前には、どろり濃厚チキンガラベースのスープで有名な店がある。


 とても、魅力的だ。


 今なら、すぐ入れる。


「いや、ダメ、だ」


 もう、麺を喰らったのだ。


 これ以上、いけない。


 深呼吸し。


 なんとか店から目線を外し、歩き出す。


「少し、歩いて帰るか」


 ふらりと、布施の町へと。


 


 

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