第344話 大阪市中央区難波のラーメン並野菜マシマシニンニクマシマシ肉脂マシ
「どうにも、力が出ないな……」
なんだか、食生活が乱れている気がする。そう、野菜が不足しているのだ。
「これは、野菜を食わないとな」
どうにかこうにか仕事を乗り切り、帰り道。
難波で降りて北側に出る。
道頓堀方面だが、そこまでは向かわず、千日前通りから一つ北に入った細道へと。そこに目的の店があったのだが……
「開店前か」
10分ほど時間があった。ならば、と近所の百円ショップで少し買い物を済ませる。ちょうど欲しいモノがあったので、時間の有効利用だ。
そうして買い物を終えて再び店に向かえば、看板に灯が入っている。小さな裏路地への角の小さな店舗の前には、営業中の札も。
一番乗りだ。
店内は、六席のカウンターが厨房を囲んだだけの小さな店。その入り口に小さな食券機がある。
メニューは、ラーメンがまぜそばか。
まぜそばも惹かれるのだが。
「ここは、ラーメンにしよう」
という訳で食券を確保し、一番奥の席へと。
座席には小さなメモ用紙と赤ペンがある。
メモ用紙には、麺、野菜、ニンニク、肉脂の量の指定がある。尚、カラメは座席に備え付けなので安心だ。
という訳で、
「よし、ここは野菜をしっかり食わねばな」
麺並、野菜マシマシ、ニンニクマシマシ、肉脂マシに○を付けて、食券と共に厨房へと出す。
マシマシが大丈夫か問われるが、大丈夫だ、問題ない。
かくして後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。今日は、黄金編プルメリアのターン最終日。おでかけを仕込み、適度にアクティブポイントを稼いだところで盛り付けが始まっていた。
「これはこれは……」
普通に麺と肉とにんにくを盛りつけた上を野菜で覆い。
その上に、丁寧に丁寧に大量の野菜が盛りつけられていく。高く高く。
ざるの中身を全て積み上げ、目の前にとやって来る。
「おお、マシマシだ」
丼が見えないほどの高い山だった。他は何も見えない。
「いただきます」
ならば、喰えばいいのだ。
「さすがに、何も味がないのは辛いな」
一口いくが、もやし味だ。とはいえ、ここには色々ある。
カラメと、スパイシー昆布酢なるものをダバッと掛ける。
「これはいけるな」
出汁醤油ベースの和風ドレッシング的な味わいになり、ああ、これならサラダとしてどこまでいけそうだ。
モリモリと野菜を食う。流石に、全く零さないのは難しく、備え付けのティシュで机上を掃除しながら、どんどんと喰い進む。
山が低くなってくると、野菜の山の隙間をスープが登ってきていたのか、微かに豚の風味。
カラメと昆布酢を足しながら、喰えば、あの高い山も腹の中。
麺が、見えてきた。
「うんうん、豚骨醤油だ……」
ガツンと醤油が効いていたり科学の粋を集めた味が立ったりするのも多いが、この店のものは比較的オーソドックスな豚骨醤油味なのが持ち味だ。
麺が出てくれば、野菜を沈めて天地を返す。その時点で、ニンニクもたっぷりスープに溶け込み、ガッツンガッツン効いてくる。
健康的な味わいだ。
だが。
「さすがに、薄くなってるな」
大量の野菜の水分で、スープが薄まっている。
再びカラメをダバっと掛けて丼に向かえば、隠れていた豚が現れていた。トンテキとして一食を賄えそうな分厚く大きな豚だ。齧り付けば、ごくごくシンプルな豚の旨みが、カラメで引っ張り出される。
スープに浸し、混ぜ込み。
麺を喰らい豚を囓り野菜を食み。
遂には、丼の中身は野菜の破片と僅かなスープを残して胃の腑に収まったのだった。
流石に、スープを飲み干すのはキツイ。汝、完飲すべからず、というしな。
最後に水を一杯飲む。
レモン入りでさっぱりした味わいが、こってりを食い尽くした口に心地良い。
すっきりしたところで。
「ごちそうさん」
店を後にした。
「さて、帰るか」
重くなった腹を抱え、駅へと足を向ける。
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