第345話 大阪市中央区千日前のニンニクアブラそば

「何か喰って帰りたいが……間に合うか?」


 少々仕事が長引いた帰り道。御堂筋線なんば駅に降り立っていた。哀しいことに、このご時世で閉店時間が早い。


 少し買い物したいものもある。


 それらをこなしていけるだろうか? いや、いくしかあるまい。


 さて、どうしたものか?


 店は色々あるが、今日は気になっていたのを喰いにいくか。そのための工程を組み立てる。


 駅を出て東へ向かい NAMBAなんなんへ入り、 TOHO シネマズ横のエスカレーターを登る。そこから、家電量販店へ入り、欲しかったものを探すが。


「……微妙だな」


 これ、というものがなかったので、次へ。


 店舗を通り抜けて裏に出て少し北上し、曰くある地に立つ家電量販店へと入る。


「ここも、微妙か」


 どうにも、これは慌てて買わずに一度帰って再検討した方がいいな。


 そうして、店のすぐ側にある店へと向かう。


 ずっと気になっていながら食べるタイミングを逸していたメニューがあるのだ。


「よし、大丈夫そうだ」


 ラストオーダー時間がギリギリっぽいが、営業中の札を見て店内へ。

 

 時間的にそこそこの客入りだが、席は空いている。奥の方のカウンター席へ付いて、


「ニンニクアブラそば、醤油で」


 を注文する。塩味があったり有料でマシもできるが、今日の所はノーマルでいこう。


 後は待つばかり、となれば『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、白無垢の五乙女イベント。リリーがこないのでのんびりロザリーステージを巡回しているところだ。


 おでかけを仕込み、出撃を一度済ませたところで、盛り付けが始まっているのが見えた。


 ゴ魔乙を終了して待つこと少し、注文の品がやってきた。


「ふむふむ、こういうのか」


 黒い丼に盛りつけられた麺の上には、もやしとキャベツと人参。傍らには、シーチキン状の解し豚とたっぷりの刻みニンニク。


 なるほど。


 ニンニクアブラそばという名前から連想するアレ系だ。それでいて人参の赤が彩りとしてよいな。


「いただきます」


 まずは、混ぜる。最初から天地返し。いや、そうなると、天地などないか。天地無用。


 醤油ダレで黒く染まっていくあれこれ。


 いい感じに混ざったところで麺を啜れば。


「おお、ガツンとくるな」


 ニンニク醤油がいい具合に立っている。そこに、解し豚と野菜も絡んでくる。全てが混ざり合っているので、とにかく喰らえばいいシンプルさ。


 そこで、


「ラストオーダーですが、追加はいいですか?」


 との声。


 やはり、ギリギリだったのだ。


 ここは〆用の米……いや、いいだろう。


「大丈夫です」


 と答え、再び丼と向き合えば、空腹にスルすると、麺が野菜がニンニクが豚が入ってくる。


 ああ、こういうのは、アレだ。


 勢いで喰うのがいい。


 ガツガツ。


 そういうオノマトペが似合う、ねこまんまをかっ込むがごとき食い方をするのである。


 ニンニク醤油味に急かされるように、あっという間に丼は空になった。


 少し、米を追加して置かなかったのを後悔するが、残ったタレも浚えてしまい。


 水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 会計を済ませて店を後にする。


「さて、帰るか」


 駅へと、足を向ける。

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