第342話 大阪市中央区日本橋のラーメン(並ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラカラメ)

 何かと切羽詰まっている昨今。


 どうにか仕事をこなすも、力が出ない。こんなときは。


「ガッツリ喰って帰ろう」


 ここのところご無沙汰だった、難波の地へと降り立った。南海方面から出て途中で東へ、道具屋筋に入って少し南下して更に東へ。


 そのまま堺筋手前の細道へと。


 そこで、少し北に戻ったところに目的の店があった。


「そうか、今は開店時間が早いのか」


 ややこしいご時世のため、昼営業がない代わりに夜営業の開始が早くなっている。おかげですぐに入れるのはありがたい。


 大分客は入っているが、まだ席は空いている。


 入って正面の食券機でラーメンの食券を確保し、奥に向かってL字に厨房を囲む細長いカウンターの奥の角が空いていたので、そこへと。


 食券を出せば、


「麺の量は?」


「並で」


「ニンニク入れますか?」


「ニンニクマシマシで、あと、ヤサイマシマシアブラカラメで」


 サクッと詠唱を済ませれば後は待つばかり。まずはすぐ横にある給水器で水分を補充し、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は学園乙女のストーリーの新章。明らかに怪しいけどまだ疑われていないめがねっ娘と保護者の御華詩が展開している。って、やっぱりこの保護者……


 それはさておき、今回のイベントで福袋にフォレットが来てしまった都合上、それなりに頑張っている。隙あらば出撃してエリオの想いを稼いだりしていれば時は過ぎる。


 ほどなく、注文の品がやってきた。


「最近はこういう盛りだな」


 以前は丼全体を使って円錐状に野菜が積まれていたが、今日の野菜は周囲は開けて、円錐と言うより円筒系だ。アブラで彩られて艶やかな野菜。


 麓には、たっぷりの刻みニンニクと豚の肉塊が並び、周囲は入荷したスープが表面張力一杯に盛り上がっている。


 気持ちも盛り上がる見た目だ。


「いただきます」


 まずは、溢れんばかりのスープをレンゲでいただく。ガンガンくる醤油と豚の脂の旨み。盛り上がる味だ。


 続いて、箸を取って脂塗れの野菜を頂く。茹でたて熱々のところを、更にスープに潜らせれば、口内に熱とどろりとしたアブラの食感とややクタりながらも確かに存在するもやしの歯応え。ああ、いいぞ。どんどん盛り上がってくるじゃないか。


 ある程度スープと野菜を減らしたところで、いよいよ麺だ。


「おお、しっかりした味だ……」


 なんとなくいつもよりスープが濃厚な気がしていたのだが、麺もしっかり味を纏っている。更に、麺を引っ張り出す過程でニンニクをスープに混ぜ込んだので、ビリビリと刺激が伝わってくる。


 こうなったらと、席に備え付けの一味とコショウをバッサバッサ野菜に振り掛けて喰らう。辛い。だが、その刺激がいい。


 徐に豚に齧り付けば、やはりカラメだ。だが、豚だ。肉肉しくて元気になってくるな。


 後はもう、勢いだ。


 麺を引っ張り上げて野菜と一緒にモリモリ喰らい豚を囓りスープを啜る。


 どこまでもどこまでも、盛り上がった勢いで喰らい付けば。


「終わり、か」


 残ったのは、スープだけ。


 レンゲで追い駆ければ、底に残った麺と野菜の切れ端。


 〆に啜って。


 最後に水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、腹ごなしに歩くか」


 オタロードへと、足を向ける。

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