第335話 大阪市浪速区難波中の黒胡椒味噌魂心らーめん

「どうにも、疲れが抜けないなぁ」


 季節の変わり目というのもあるだろうが、調子が上がらない日々が続いている。早寝早起きをしているのだが、春眠は暁前に目覚めてそこまでの睡眠が取れている気がしない。


 こういうときは。


「しっかり喰って、帰るか」


 仕事を終えた私は、食を求めてなんば駅に降り立っていた。


 南側に出て、堺筋の手前。オタロードへと向かう。ここなら、喰うところは色々ある。


「よし、まだ、ランチタイムか」


 残り十分程度だが、ソフマップ前の店に到達できた。


 幸い、すぐ入れそうだ。


 店頭の券売機でラーメン……では寂しいのでトッピングが載った魂心らーめんなるものを選び、案内されたカウンター席へと。


「黒胡椒、大盛で。麺は固め、あとは普通で。」


 食券を出して手早く注文をすれば、あとは待つばかり。そこで席を立ち、入り口横へ。


「よし、間に合った」


 入り口横には保温ジャーがある。ランチタイム限定のごはん無料サービスである。深めの茶碗に盛り付けて席へと。これで、時間が過ぎても大丈夫だ。


 一息入れて、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、6周年記念のイースターイベント。五悪魔のターンとなればリリーを推して参るのだ。とはいえ、出撃しているほど時間はなさそうなので、おでかけを仕込むだけ仕込んだところで、注文の品がやってきた。


「なるほど、ほどよく豪華だ」


 こげ茶色のスープに太い麺がのぞく上には、丼に沿うように海苔が三枚、うずらだけでなく通常サイズの味玉が一つ、チャーシューが1枚追加。ほうれん草と刻みネギはデフォだ。


「いただきます」


 まずは、レンゲでスープを一口。ガツンと黒胡椒の刺激と濃厚な豚骨味噌の味わいが、体の奥に染みていく。


 そのまま、麺を啜る。スープに負けない食べ応え。そのまま、ご飯に。


「麺で米を喰う快感……」


 そういえば、この麺は東の方だが、こういう米と合わせるラーメンがあるのだから、粉物にご飯の文化は理解できると思うのだが。お好み焼きと焼きそばとごはんと味噌汁とか。そういうのに匹敵する、快楽が、ここにはある。


 更に、味玉を囓る。中は半熟。濃厚なスープを纏った玉子の味で、米へ。そこを今度は麺で追い駆ける。


 ああ、いいぞ。炭水化物と炭水化物のマリアージュ。そこにチャーシューを贅沢に一枚まるごと囓ると、得も言われぬ多幸感。


 箸休めにほうれん草を、そして、海苔をスープに浸してご飯を巻いて変化も付けてみる。


 半分ほど食べたところで。


「そろそろ、これを行くか」


 備え付けのおろしニンニクを一匙投入する。


「ふぅ……後半は、やはりこういう刺激が欲しい」


 新たな味わいになったところで麺を米をスープを喰らい。


 心身が満たされて行くのを感じていれば。


「あれ、もう、終わり?」


 丼の中には、スープだけ。米も尽きた。


 いや、まだだ。


「これを足そう」


 煎りゴマをパラリと振り掛け、香ばしさをプラス。ここからは、黒胡椒味噌豚骨スープを味わおう。


 ズルズルとレンゲで啜り。


 最後まで飲み干せば。


「まくり券どうぞ」


 この店のシステムで次回の割引券ゲットだ。


 食い尽くしたところで、水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、腹ごなしに少し歩くか」


 オタロードを、南へと。


 

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