第334話 大阪市東成区深江南のTOMATO辛麺(レギュラーこんにゃく麺5辛)+ごはん小+瓶ビール

「時間があるな……」


 観たい映画がレイトショーだったため、予約はしたものの、仕事を終えて直接向かうには時間があった。


 ならば、何か喰ってから向かうのもいいだろう。


「久々に、宮崎辛麺もいいか」


 最近、インスタントなどでも露出が増えてきた宮崎辛麺にターゲットを定める。


 そうして、ふらりと訪れたのは新深江の地。地味な住宅地ではあるが、ここに大阪では貴重な宮崎辛麺の現地のチェーンがある。


 駅を出て、文房具とペット関係の超大手企業の間を通って東へ、大きな通りを左に折れて少し行けば、赤い上りが見えてくる。


 そこが、目的地。


「色々大変だなぁ」


 対策をしっかりしていることを示すマークやら、注意事項が店頭に張り出されていた。こういう地道な活動が大事だ。


 店内に入れば、まず検温。そして、カウンター席へと。当然、アクリル板が設置されている。どこに言っても味に集中できるのはありがたいシステムであるな。


 ラミネート加工されたシートのメニューを観る。セットもいいが、ここは麺をしっかりといくか。


 後は、少しアレンジされたのもいいかもしれない。


 という訳で。


「TOMATO辛麺レギュラー、こんにゃく麺、5辛」


 とトマトを選び。


「ごはん小」


 と米を追加し。


「瓶ビール、アサヒ」


 とビールを追加する。


 完璧だ。


 これは、もう満たされるしかない。


 注文を通せば後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 今日から、いよいよ五悪魔のターン! 当然、リリーステージを周回する。そのために、諭吉さんが既に一人旅立ったが、必要な犠牲だ。


 その前に、使い魔を整理したりしていると、出撃するよりも前に注文の品がやってきてしまった。まぁ、いい。


「レギュラー……大盛だな」


 そう。この店のレギュラーは大盛なのだ。中々壮観な丼のサイズである。中には唐辛子とトマトで真っ赤なスープ。黒っぽいこんにゃく麺が覗き、ニンニクとニラと溶き卵と挽肉が入っている。


 ご飯は、小で普通に一膳ぐらいのサイズ。瓶ビールは中瓶だ。


「いただきます」


 まずは、スープ。


「……これはドギツイ旨さ」


 トマトの濃厚な風味にベースの醤油と唐辛子と出汁の味が美事にマッチして、とにかく旨味成分が凄い。5辛でそれなりに唐辛子も入って辛味もあるが、旨味が圧勝している。少々値が張るがチーズをトッピングする手もあったか。次はそうしよう。


 そんなことを考えながら、こんにゃく麺を啜る。食感は完全にこんにゃくだが、原料はそば粉でヘルシー。安心してズルズル行ける。


 そうして旨味をたたえた口内にビールを流し込む。


「ふぅ、生き返るなぁ」


 仕事終わりに、一杯やりながら旨いものを喰う。


 更にスープを啜って、


「口内でリゾットができる……」


 米にも抜群に合うスープである。


 ゴロゴロ入ったニンニクは、辛味が抜けていてそのまま囓っても旨く、挽肉もしっかり旨く、ニラの風味はいいアクセントだ。


 それら全てがトマトの旨味に昇華されていた。


 こんにゃく麺と米を贅沢にトマト味で頂き、ビールをグイッといく幸福な一時。いや、二時。三時。


 何度も何度も、味わっていく。レギュラーだからこそ、ここまで楽しめるのだ。


 だが、それでも。


「終わり、か」


 替え玉でごはんを頼みチーズを足せば至福だろうが、流石に腹が膨れてしまっている。


 大丈夫。次はある。


 未練を断ち切るべくスープを飲み干し。


 旨味の余韻に浸り。


 最後に水を一杯飲み欲して一息。


「ごちそうさん」


 会計を済ませて店を後にする。


「さて、のんびり映画へ向かうか」


 再び駅へと足を向ける。



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