第332話 大阪市東成区東小橋の肉増しラーメン(ヤサイマシマシ、アブラマシ、ニンニクたくさん)

「肉が焼けている……」


 戦場から戦場へと渡り歩く週末を超えて、この地に立つとは。

 

 なんとも罪深いことだ。


 駅の構内にまで漂いくる。これは、危険だ。


「腹の虫が、騒ぎ出す……」


 そういうわけで、私は仕事帰りに空腹を満たすため、鶴橋へと立ち寄っていたのだ。


 焼き肉を食いにきた訳ではない。週末の疲れを癒やすため、健康的な食品を食うためにやってきたのだ。


 JR鶴橋駅を千日前通りに出て右折。


 少し歩いたところに、目的の店はあった。


 細長い店内に厨房に沿って真っ直ぐにカウンターがある。


 幸い、席は空いている。


 早速入り、食券機へ。


「ここはラーメン……いや」


 回復には、肉だ。


「肉増しラーメン、いってみよう」


 食券を確保し、奥の空いている席へと着く。


 店員に食券を出せば好みのトッピングを尋ねられるので、


「ヤサイマシマシ、アブラマシ、ニンニクたくさんで」


 とサクッと注文を済ませる。これで後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在はイベントの谷間だが、リーグ戦の決勝でもある。サクッと出撃してそれなりのスコアを出して一安心したところで、注文の品がやってきた。


「ふむ、肉、だな」


 丼の上にこんもりと盛られた野菜は、頂点にアブラを湛えている。麓には刻みニンニク。そして、斜面に沿うように分厚い炙りチャーシューが5枚並んでいる。中々壮観だ。これは、健康に良さそうである。


「いただきます」


 まずは、野菜から。アブラを纏って味は十分。癒やしの味だ。しばし野菜を摂取して適度に胃を動かしたところで、確保された導線から麺を引っ張り出す。太くて固い麺。囓れば、麦の味わいがしっかりする。勿論、豚の出汁と醤油の味わいも。


 そこで、チャーシューに。焦げ目が付いていて香ばしさが加わったタレの味わい。そのままおつまみになるタイプのチャーシューを贅沢に喰らい、麺を引っ張り出していれば、麓のニンニクが溶け込んでいい塩梅だ。


 全体的に、そこまでガツンとくる味わいではなく、比較的食べやすいのでスイスイと喰い進めることができる。※個人の感想です。


 天地を返して麺をモリモリ食うのだが、やがて。


「しまった、薄まってきた……」


 元がやさしめなのもあり、野菜を沈めると水分で薄まるのは物理法則の必然。だが、大丈夫。


「タレはある」


 卓上に、別の店で言うカラメが置かれていて自分で調整できるのだ。回し入れれば、しっかり味が回復する。


 それだけではない。


「こういのもあるんだよなぁ」


 カレー粉を軽く豚に振るって喰らう。一気にカレーだが、スープに溶かすことはしない。支配されてしまうからだ。


 次に、粗挽きではなく、定番のラーメン胡椒をたっぷりと。


 ピリリとした刺激が味を引き立てる。


 続いて、魚粉。


 これも、魚介豚骨風味に一気に持って行かれるのでスープに溶かさず掛かった部分を喰らって楽しむ。


 調味料が色々あるのが、この店の楽しいところだ。


 そして、楽しい時が早く過ぎるのも、道理。


「終わり、か」


 あれだけあった野菜も豚も麺も、手品のように胃の腑に収まっている。


 残るは、切れ端の残るスープのみ。


 レンゲで少し追い駆け。


 少しタレを足してくっきりした味を楽しみ。


 最後に、水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、帰るか」


 健康の元を胃の腑に収め、駅へと歩む。


 

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