第330話 兵庫県西宮市南越木岩町のらぁめん+ごはん

 合唱練習のために、苦楽園口へとやってきていた。練習開始は13時。途中で喰うには余裕がない。ならば、早めに現地を訪れて、ということで、


「久々にここにするか」


 学生時代によく行っていたチェーン店に入ることにした。


 時間的にまだ昼になった直後なので座席は空いている。入ってすぐのカウンター席に着いて一息。


 座席においてあるメニューを手に取ったのだが。


「ありゃ? メニュー減ってる?」


 前に来たときは色々とバリエーションがあったのだが、基本のメニューばかり。このご時世、色々と厳しいのかもしれないなら。


 ならば、よし。


 注文を取りにきた店員に。


「らぁめんと、ごはん」


 どこまでもオーソドックスな注文を通す。いわゆるラーメンライス。以前はラーメンセットだったのだが、観鈴の機嫌がよくてもライスがチャーハンになるわけでもなし、まぁ、いい。


 注文を通せば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は救いの鍵の少年が経営する喫茶店を盛り立てようとするイベント。リリーが報酬となっているので、少し頑張らねばならぬ。苺大福を集めるのだ。


 軽く出撃を終えたところで、注文の品がやってきた。


 薄褐色のとろみのあるスープはその奥の麺を隠す。茶色く色づいた煮玉子。タレがしっかり染みたチャーシュー。もやしとネギ。ごくごくオーソドックスな具材。


 ごはんも普通に盛られ、そして、小皿にキムチ。


「キムチはおかわりできます」


 とのこと。そういえば、このような状況になるまではキムチの壺が置いてあって食べ放題だったよなぁ。学生時代は全部喰う勢いだったのは若気の至りか。


 それはさておき。


「いただきます」


 まずは、レンゲでスープを一口。


「ああ、この味……」


 鶏と魚介の白湯醤油。甘みのある、なんというか、この店の味だ。キムチを囓れば、これまた甘め。蜂蜜が入っているらしいので、辛味より旨味、ということか。


 そこにごはん。


「うんうん、こういうのでいいんだよ、こういうので」


 飾り気のない味わいが、心地良い。


 と思ったのだが。


「肝心の麺を喰ってない……」


 スープに箸を沈めて掴み上げるのは、細ストレート麺。しっかりスープを纏っていて、やはり心地良い味わい。ネギともやしを合わせて喰らうと、またよし。 


 ここで、チャーシュー。


「やはり、食べ応えがあるな」


 大きめのチャーシューは厚めで、タレをガッツリ吸い込んいる。なんというか、これだけで酒が飲める。続いて煮玉子を囓れば、こちらもしっかり味が染みている。


 どこまでも、主張の強いチャーシューと味玉だが、このスープはいい感じにそれらを包み込んでくれる。あっさりでもないが、こってりし過ぎてもいない。神戸からのチェーンだが、なんだか大和郡山市を思い出すちょうどよさ。


 もう、細かいことはいい。


 麺を喰らい、具材を喰らい、米で追い駆け、ときおりキムチを挟む。


 三角食いで、堪能する。


「終わり、か」


 茶碗も小皿も空で、丼にスープを遺すのみ。


 ごはんおかわり自由でもなく、無理にキムチをおかわりすることもない。


 これで、完結した昼食だ。


 いや。


「ちゃんと完結させないとな」


 レンゲを手に、丼に残ったスープを追い駆ける。母校の最寄り駅にあった関係で、どうしても懐かしさを感じる味わい。


 最後まで堪能し、丼は空に。


 水を飲んで、一息。


「ごちそうさん」


 会計を済ませて、店を後にする。


「さて、練習場所へ向かうか」


 店を出て左折し、道なりに進む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る