第325話 大阪市浪速区日本橋の肉そば(冷)大
「色々と買うものがあるな」
一週間を乗り切った仕事帰り。空腹を抱えた私は、難波の地に降り立っていた。
南海側の出口を抜け、なんさん通り方面へ抜ける途中でATMによって財布の中身を潤し、なんさん通りから一つ南の筋へ入って東へ。
「もう、片方ないんだよなぁ」
向かって左のビルは解体され、右のビルだけが残るソフマップなんば店ザウルスだ。
最初の目的地はここ。エスカレーターで6Fへ。まずは、予約を済まさねばならないのだ。
「なんだか、寂しくなったよなぁ」
あれこれ統合されたとういうことは、一つのジャンルごとの床面積が小さくなるということだ。半分がコミックスやグッズ。そして、もう半分が音楽・映像メディアである。
「ありゃ? 結構予約終了しているなぁ」
壁に並ぶ予約券ホルダーには、チラホラと空になったものが。
流石に発売までは二ヶ月以上。残っていることを期待して探せば。
「お、あったあった」
眼鏡を掛けた背の高い女性を追い掛ける金髪の女が、溺れていためがねっ娘を救って共にこことは違う世界~裏世界を旅する物語。裏世界ピクニックのBD予約が最初の目的だ。
とはいえ。
「BOXにまとまって結果的に合計は安くなるとはいえ……」
上巻下巻予約で四千円。まぁ、必要経費だ。裏世界の異物でも入手してDS研に買い取ってもらうようなことができればいいのだが、命掛けだからな。
サクッと予約を済ませて、ソフマップを出る。
「さて、次はコミックスだが……」
そこで、腹の虫が鳴く。
「先に、飯を食うか」
とはいえ、どこで喰ったものか? 外出機会自体が減っているこのご時世、どうせなら、最近行っていない店がいい。
「よし、あそこにしよう」
刺激的なメニューのある店を目指し、オタロードを南下。
アニメイトビルも過ぎ、大きめの道路と交差したところで左折。堺筋の手前で右に折れれば目的の店が……
「あれ?」
シャッターが閉まっている。
どうしたことだ? と近づいて観れば。
「取り壊し、か」
どうやら、老朽化で店舗が取り壊しになるため、立ち退き閉店になるようだ。それに合わせて、営業を縮小し、土日祝しかやっていないとのこと。そうだよな、先週土曜はやってた気がするしな。
とはいえ、これは困った。
さて、どこで喰ったものか?
元の道路に戻り、何気なく東を観れば、
「おお、あそこも久々だな」
堺筋の向こうに見えた幸の光に足を向ける。
堺筋を越えて一つ東の道の角に目的の店はあった。
「よし、すぐ入れるな」
幸いにして開店からそこまで時間は経っておらず、人が入り出したところ。硝子張りの引き戸の向こうに見える厨房をL字に囲むカウンター席には十分に空きがあった。
店に入り、左手の食券機へ。
「ま、冷やの大でいいだろう」
肉そば(冷)大の食券を確保して、角のカウンター席へ。両側にアクリル板がおかれ、更にはアルコールスプレーまで備え付けた丁寧なスペースに着く。
出された水で喉を潤し食券を出せば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。
現在は、ロザリーメインのイベントだが、リリーも活躍している。おでかけを仕込み、適度に出撃をしてアクティブポイントを稼いでいこう。
茹で時間は結構かかるのでのんびり出撃することしばし。APが尽きた辺りで、できあがりの気配。
ゴ魔乙を終了してほどなく、注文の品がやってきた。
「う~ん和だ」
麺汁と、周囲に肉、中央にはたっぷりの刻み海苔、その下に覗くは刻みネギ。
「いただきます」
そうして、山の奥に箸を入れ、引っ張り出すのは極太の和蕎麦。某系の麺に引けを取らない硬くて太い蕎麦。
それを、汁に潜らせて食べれば。
「ああ、いい、味だ」
麺汁にはラー油が入っている。和だが中華の空気を漂わせている。その塩梅がいい。
海苔とネギの風味で頂くのはざるそば風だが、まったく異なる食感。更には、豚しゃぶ的な肉。これがまた、いい。
ヘルシーな蕎麦ながら、食べ応えはつけ麺級ガッツリ。腹の虫が歓喜する。
更に、様々なトッピングがある。
そば屋定番の天かすを入れれば、旨味がプラスされ、ロースとガーリックでは香ばしさが追加。
ここしばらく食べていないタイプの味わいは、口福である。
冷はしっかり蕎麦を締めているだけに、ガツガツと蕎麦を喰らう感触。ベースのラー油入り麺汁に薬味による味の支援。肉々しい肉。
腹の虫に導かれるまま、貪るように食す。
冷だけにするすると喰えてしまい、あっという間に食い尽くすが。
「まだだ」
最後に、席に用意されたポットに入ったそば湯で汁を割る。
「ああ、ほっこりするなぁ」
生姜入りのそば湯割りは、冷で冷えた口内体内をじんわり温めてくれる。ガーリックがしっかり効いて追い駆けてくるのもいい感じだ。
ゆっくりと飲み干し。
最後に水を一杯飲んで一息吐き。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「さて、買い物へ行くか」
オタロードへと、足を向ける。
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