第316話 大阪市中央区日本橋の塩ラーメン(並ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラカラメ魚粉)
「仕事が、納まった……」
11月ぐらいから何かと慌ただしかったのだが、それも乗り切り、無事に仕事を納めて冬休みに入ることができた。
さて、自由の身だ? ということで、難波駅に降り立ったのだが。
「腹が、減った……」
働けば、腹の虫が騒ぎ出すのが人の常。さて、何かガッツリ喰ってついでに買い物して帰るのもいいか。
御堂筋線から南海方面に出て、なんさん通り側から脱出……の前にATMで軍資金を確保。
改めてなんさん通りへを渡り道具屋筋に入り少し南下してから東へ。
すると、オタロードへと続く裏道に到達する。
そこで、オタロードと逆に少し行けば、目的の店があった。
開店直後でさて、店内に列はあるだろうか? と思ったが、店内はまだ数人しか客はおらず、目の前で食券を買う一人を入れても、並ばずに入れるのは確定だ。
ありがたい。
と思っていると、店員が先に麺の量を聞いてくる。
前の客が、店員に麺量を告げたのだが、続けて。
「持ち帰りで」
持ち帰り! そういのもあるのか。
容器は用意していないが、鍋やタッパーを持参すれば持ち帰れるシステムなのだ。それはさておき、店内の待ちが思ったより一人少ないのは僥倖だ。
続いて麺量を聞かれたので、
「並で」
と答えて、食券機へ。
ラーメン、塩ラーメン、つけ麺、まぜそば。色々あるが、ここはやはり、基本のラーメンか。
食券を確保し、奥のウォーターサーバ横の席を確保する。
やってきた店員に食券を出し、
「ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラ魚粉カラメ」
と詠唱する。また、うっかりアブラを言ってしまったが、今日ぐらいいいだろう。
あとは待つばかりとなれば、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』の時間だ。現在はクリスマスイベント中。ゴ魔乙でクリスマスと言えば、やはり元になった『デススマイルズ』の2を思い出す。デススマイルズクリスマイルズキヨシキヨシコデスクリスマイルズ♪
おでかけを仕込み、ロザリーステージで一度出撃したあたりで盛り付けをしているのが目に入ったので終了。
少し待てば、注文の品がやってくる。
「う~ん、これぞクリスマシマシツリーだな」
山盛りの野菜の頂上は魚粉で褐色に染まり、麓にはゴロゴロと豚。どっさりの刻みニンニク、そしてアブラ。
豪華絢爛なツリーではないか。
「いただきます」
魚粉たっぷりの野菜を食えば、もう、これだけでバクバクいける味わい。
そのまま食い進め、零さないように慎重にスープを啜り。ニンニクを溶かし込み。
頃合いを見て麺を引っ張り出す。
「おおぅ、熱々だ」
アブラと野菜で覆われたスープは、時間が経っても熱を保っていた。
火傷しそうな熱さと、バキバキの固めで食いでがあり、そしてニンニクが効いたこってりスープを纏った麺は、脳に直接幸せをぶち込んでくれる。
豚を豪快に囓りアブラで塗れた野菜で追い駆け、本能のままに喰らう。
更に、だ。
「よし、今日は豪勢にいこうじゃないか」
アブラの白と肉と醤油の褐色と麺の黄色に加え、胡椒の黒と、唐辛子の赤を加える。赤と黒だ。捏造ミステリーだ。いや、少なめだがキャベツの緑がある。赤と緑、これはもう、クリスマスだ。ん? 緑と黒もある。なんだか最近よく観る組み合わせであるが、それはそれとして、呼吸を整えて、丼と向き合う。
新たな刺激が加わり、腹の虫も大喜びだ。
喰う。喰う。喰らう。
デスクリスマシマシだ。魔界のメリークリスマシだ。
喰らう喜び。
ただただそれを味わっていれば。
終わりの時は、早く訪れる。
「もう、終わりか」
丼の中に残るのは、アブラが乳化して濁った褐色のスープのみ。混ぜると醤油の色が滲むのもまた趣があるそれを、レンゲで一口、二口。
余韻に浸り。
呼吸。
そして、ウォーターサーバーから直接冷えた水をコップに注ぎ。
グイッと飲み干す。
未練を断ち切る。
再び、深呼吸。
よし、いいだろう。
席を立ち、
「ごちそうさん」
店を後にする。
「さて、まずは予約していたBDの確保からだな」
オタロードへ入り、ソフマップへと。
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