第315話 大阪市天王寺区舟橋町の辛口炙り肉ソバ『味噌』並+唐揚げ+野菜トリプル+ごはん中

「貴重な時間、だな」


 厳しいご時世ながら、本日はTRPGサークルの例会で遊ぶ機会を得た帰り。


 鶴橋に降り立った私は空腹に苛まれていた。


 このまま帰るより、何か喰って帰るのがいいだろう。


「さて、何を喰うか、だが」


 鶴橋の駅を出れば目の前は千日前通り。この界隈には、


「麺、だよなぁ」


 やたらとラーメン屋があったりするのだ。


 その中で、一際目を惹く看板がある。


「うん、久々に行ってみるか」


 道路を北側に渡り、西へ少し。目的の店舗に到達すると、


「ありゃ、並んでるか」


 数人の列ができていた。とはいえ、店内を見れば席は空いている。どうも、片付け待ちのタイミングのようだ。


「これなら、すぐ、か」


 ならば、待とう。


 待ち受けのリストに名前を書き、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在はクリスマスイベント中だが、まぁ、のんびりしたものだ。さて、出撃しようか……と思っていると。


 店内に動きがあった。


 一気に案内が進み始める。予想通り、片付け待ちだったようで、ごっそりと列の前の客が入り、少し待たされたが続いて案内される。


 店頭のメニューを見て限定にも惹かれたが、やはり基本がいい。


 ただ、それだけでも寂しいので。


「味噌の並、辛さはLV3、野菜を……トリプル」


 これで、健康はバッチリだ。なら。


「からあげ1個」


 これぐらい、いいだろう。


 だが、味噌、だからな。


「ごはんを……中で」


 米プラス。


 注文を済ませれば後は待つばかり。改めてゴ魔乙の時間だ。


 イベントステージは久々のジャラスターステージ。ジャラスターステージとは、ジャラジャラスターが出るステージだ。これが、中々楽しいのだが、しばしご無沙汰だった。


 しかも今回は自機が救いの鍵の少年。ジャラスターは学園乙女ステージだから円形のリングは新鮮だ。


 巡回でブッシュドノエルを集めつつスコアアタックも楽しめて飽きないのがとてもいいのがゴ魔乙なの。


 2回ほどのんびりと出撃したところで、盛り付けの気配を感じて終了してて待機。


 ほどなく、注文の品がやってくる。


「ちょっと、やり過ぎた、か?」


 大きな角煮の炙りチャーシューに山盛りの葱。その下にはたっぷりのキャベツともやし。振り掛けられた赤い粉。そして丼の三分の一ぐらいの面積はありそうな大ぶりの唐揚げ。そこに、茶碗に入ったご飯まであるのだから、中々のボリュームだった。


「いただきます」


 まずは、粉を混ぜる前に素の味噌スープをレンゲで味わう。


「うんうん、これは、ご飯に合う味だ」


 葱と野菜をスープに浸して喰い、そこを米で追い駆けると、当然旨い。


「っと、麺もいかねば」


 麺を引っ張り出して啜れば、こちらもグッド。


 そこまで味わったところで、唐辛子を混ぜる。


「LV3だと程よい辛さ(※感じ方には個人差があります)か……」


 唐辛子の風味が加わり、味噌の味わいが広がっていく。


 葱野菜麺米、存分に楽しめる味わい。


 更に、豚を囓ると香ばしくもトロトロ。甘みのある豚が辛味のスープといい対比になるな。


「ここで、いくか」


 ようやくそこで、唐揚げだ。


 スープで反面がしっとしりしているが、丼からはみ出た部分はからっとしている。


 箸で掴み、浸っていない部分をサクッと囓る。


「うんうん、いい味だ」


 生姜やにんにくの薬味の利いた衣が肉の脂を吸ってしっかりした味わいの唐揚げだった。これだけでも、酒が一杯飲めそうな、そんなサイズと味。


 それを麺と一緒にいただくのだから、贅沢なものだ。


 今度はスープに浸った部分を喰えば、味噌と唐辛子が加わってまた違った旨味。


 一個で二度美味しい。


 米と麺で追い駆ければ、糖と脂のコラボレーション。ああ、心の健康が保たれる味わいだなぁ。


 だが、もう一声、行こうじゃないか。


 卓上の調味料の中から刻みニンニクを手に取り、スプーン一杯追加。


 まぜ合わせれば。


「これで、ウィルス対策もばっちりだな」


 辛味だけでない強烈なアリシンの刺激が加わり、中々派手な味わいになる。


 食が進むが、だが、まだだ。


「これもいかないとな」


 山椒を匙でパラパラと回しがけ。


「痺れる……だが、それがいい」


 ビリビリとしたニンニクとも唐辛子とも違う刺激が味噌を引き立てる。


 麺を野菜を肉を唐揚げを喰らい。


 米で追い駆ける。


「ちょっと多かった、か」


 少し苦しくなってきたが、もう一息だ。


 米をかっ込み、スープと麺で追い駆ければ。


「終わり、か」


 丼の中は赤々としたスープが残るのみ。


 レンゲで掬って追い駆けるが。


「さすがにコレを飲み干すのは、胃に悪いな」


 辛く痺れる激しい味わいに、冷静な判断を下す。


 踏みとどまって水を一杯飲んで区切りを付け。


「ごちそうさん」


 会計を済ませて店を後にした。


「さて、帰るか」


 鶴橋駅へと、足を向ける。



 


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