第310話 大阪市中央区日本橋のラーメン(並ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラマシマシカラメ魚粉)

「充実したひと時だった……」


 本日は、TRPGの一大イベント、TableGameFunFesta、略してTGFF2020が浪速区民センターで開催されたのだった。大規模イベントのため、このご時世の開催は一度は見送られたものの、近隣に二県までの参加制限やパーティションの設置などの最大限の対策を行い、参加人数を絞っての開催となっていた。


 それでも、沢山のシステムに触れることができる機会であることに違いはない。せっかくなので、二つほどシステムを楽しんだ、帰り。


 充実した時間の後は、やはり、


「腹が、減ったな……」


 という訳で、帰り道で何かを喰って行くことにする。


 浪速区民センターを出て、南へ向かい、スーパーのライフ前の道で左折。そのまま延々まっすぐ行けば、一風堂やマクドの前を通ってなんさん通りに出る。


 そのまま、更に真っ直ぐ。


 ドラクエのローソンの手前、右に折れればオタロードに入る道を左折する。


 頭は使っていない。


 腹の虫の導きだ。


 気がつけば、細長い造りの店舗の前に居た。


「お、丁度、入れ替わりか……」


 開店時間から三十分ほど。満席かと思いきや、丁度最初の客が帰って空きができたタイミングだった。


「よし、今日はオーソドックスに……」


 ラーメンの食券を確保すれば、空いた席にすぐに着くことができた。


「麺の量は?」


「並で」


「ニンニク入れますか?」


 そこで、少し思うところがあり、


「野菜マシマシニンニクマシマシアブラマシマシカラメ魚粉」


 と詠唱する。


 なんだか今日はアブラが欲しい気分だった。


 注文を済ませれば後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在のイベントは、ほどほどに楽しんでいるので丁度いい。おでかけを仕掛け、適度に出撃していると、ほどよく時が流れ、注文の品がやってくる。


「お、おおぅ……」


 新鮮な見た目だった。


 高く積み上がった野菜の頂上にはヌラヌラと光るアブラ。そこに紛れるように魚粉。麓にもヌラヌラと光るアブラ。丼の半分を覆っている。残りの半分の半分を刻みニンニクが、もう半分を豚が担う。


 アブラ、すげぇ。


 それでも、今日はアブラな気分なんだ。


「いただきます」


 まずは、アブラの山にが崩れて溢れそうなスープをレンゲで一口。


 醤油の味がスッと口内に広がるのが心地良い。そういえば、涼しいとは言え結構歩いたので、塩分が染みるのはあるかもしれない。


 そこに、アブラだ。とろっとろぶよぶよの食感を加えてスープを啜れば、問答無用でアブラの旨味が口内に広がっていく。ヌラヌラした食感に、僅かな罪悪感を刺激されるが、そこは気にしてはいけない。今日は、これでいくのだ。


 続いて、野菜の山の頂上を箸で掴んで食す。


「暴力的な旨さだ……」


 豚と魚粉のコンビの旨味が野菜の持ち味を何倍にも引き上げている。これだけでもモリモリいける。


 野菜をどんどん食し。ニンニクを崩して解かし。


 少し丼表面に余裕が出たところで麺を引っ張り出す。


 うっすらと醤油の色合いで黒ずんだそれを、啜るというか頬張れば、絡んだアブラとニンニクとスープの風味にに麺の味わいが加わって、幸せな気分になれる。


 そうだ。

 

 遊んで心を満たしてきた。


 今、私は、食事で身体を満たそうとしているのだ。


 豚を囓る。タレの味がしっかりついているものを更にスープに浸してアブラに塗れさせて豚豚しい旨味を堪能する。そこへ直接黒胡椒を塗して刺激を味わうのもいい。


 更に、全体に一味を振り掛けて唐辛子の風味を加え。


 アブラ塗れの野菜と麺と豚とスープを喰えば。


 脳に広がる多幸感。


 アブラは、合法麻薬なのかもしれないな。


 そんな危ないことを考えながらも、箸とレンゲは止まらない。


 勢いを付けて、麺を野菜を豚を喰らう喰らう喰らう。


 ああ、旨い。


 身体だけでなく、心も満たされる。


 完全栄養食と言ってもいいかもしれない。


 素晴らしい。素晴らしい。度し難いほどに旨い。


 心に少々上昇負荷が掛かっている気がするが、気にしてはいけない。


 心穏やかに。


 楽しむ。


 そうして、終わりの時がくる。


 アブラたっぷりのスープを数度、レンゲで掬って名残を味わい。


 最後は水を一杯飲んで終わりを受け入れ。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「さて、少し歩いて帰るか」


 オタロードへと、足を向ける。


 





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